映画を見る猫

イレイザーヘッドの映画を見る猫のレビュー・感想・評価

イレイザーヘッド(1976年製作の映画)
2.8
一般的に〝アート系〟と呼ばれる作品を作る映画監督は、乱暴ながら二つに大別することができると個人的には考えている。
〝映画〟でしか描けないものを捉えようとする監督と、偶々に〝映画〟を選んだ監督である。
前者は文学や絵画にはない〝映画〟ならではの時間や運動という要素を生かした作品を好む。さらにアニメとの差異を図り、写真との類似性が強い場合が多い。ホウ・シャオシェンや、アンゲロプロス、キアロスタミ、タルコフスキー、ゲリンなどが想起される。
後者は、自分の好む〝画〟を作るために映画を〝使用〟している感が強い。CMやアニメーションとの類似性が強く、映像を材料にし、加工することに躊躇いがなく、キャンバスに絵を描くように映画をつくる。ウォン・カーワァイや、日本でいうなら岩井俊二、中島哲也などがわかりやすい。
この大別は、白と黒の絵の具を混ぜるようにどちらの要素ももつ監督も多くいるので、一概にいえるものでは勿論ない。
だが、前者に対する意識があまりに低いと感じる監督は何となくすぐにわかるし、〝映画〟に対する拘りがあまりないのだろうなと残念に思ってしまう作品も多くある。無論、個人的に評価するのは前者。デヴィッド・リンチは後者組。作品によって、どうしても評価は辛くなる。
あまり肩肘を張らず、気楽に見る娯楽として、リンチの映画を観るなら問題ないだろう。そして選ぶなら、本作ではなく『マルホランド・ドライブ』『ロスト・ハイウェイ』『ブルーベルベット』辺りで満足することを勧める。また彼がつくるCMはグッと面白いので、一見の価値アリだ。