このレビューはネタバレを含みます
弁士付き上映で鑑賞しました。
この映画で驚くべきは、映画の世界へ入り込むアイデアです。映写技師の仕事をしているキートンが上映中のスクリーンにスッと入り込んでしまうのですが、カットを割らずにワンシーンで見せきっています。
鑑賞している時点ですでにとてつもない撮影であるのがわかったのですが、上映後の弁士さんの解説で「分度器を使ってスクリーンの中と外との遠近感を計算してセットを作った」と聞いて膝を打ちました。いま見ても斬新な映像のトリックを100年近く前の映画で完璧な形にした工夫と情熱に圧倒されます。
終盤のキートンのアクションも遊び心にあふれており、人間が走ったり飛んだりするプリミティブな要素だけでも、見せ方さえしっかりしていればじゅうぶん物語を物語るパワーになりえることを改めて思い知らされます。
最後のラブシーンもユニークで思わず笑みがこぼれます。キートン作品の作劇やオチは気がきいており、喜劇王と呼ばれるのは予算やアクションだけでなく、こういったところのセンスも大きな理由なのだと思います。