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ルパン三世 DEAD OR ALIVEのbackpackerのレビュー・感想・評価

ルパン三世 DEAD OR ALIVE(1996年製作の映画)
3.0
劇場版ルパン三世第6作

原作者モンキー・パンチ氏が監督したため、ワイルドでハードボイルドなルパン、しなやかな筋肉で覆われた五エ門、超有能で切れ者な銭形警部等、キャラクターが魅力的です。
ストーリーはシリアスで、非常に原作寄りとなっています。

滅多に放送しませんので、簡単なあらすじは以下の通り。

ーーー【あらすじ】ーーー
首狩将軍のクーデターにより、国王と王子が殺され、軍事独裁国家となったズフ国。
彼の国では「亡き国王は漂流島に財宝を隠した」という話が伝わっており、首狩将軍もこれを狙っていたが、島の恐るべき防御システムを前に、屍山血河を築くのみであった。
手も足も出ないルパン一向は、島の秘密の鍵を握るとされる将軍の娘エメラを誘拐するが、彼女は銭形が仕組んだ囮。
正体は女性工作員、オーリエンダーであった(本作のゲストヒロイン、以下『オーリ』)。

オーリの連絡を受けた将軍の軍隊は、彼女に構わず攻撃を仕掛ける。
味方の攻撃により窮地に立たされたオーリを救ったルパンは、彼女が落としたペンダントの写真を偶然見てしまう。
「この写真の男、この間街の酒場で見かけたな」と話すルパンと次元。
この言葉を聴いたオーリは、驚きのあまり動揺が隠せない。
ありえない。そんなことはありえない。
その写真は、その写真の男は、死んだパニシュ王子、その人なのだから……。
ーーーーーーーーーー

本作では、アバンタイトルからOPのシークエンス(ルパンが監獄島から囚人を脱獄させ、看守と派手なドンぱち&カーチェイスを繰り広げます)にて、この作品がスピーディーに展開することを印象付けてきます。
漂流島の防御システムによる猛攻の速さ。
攻撃ヘリ(コブラかな?)と強襲ぶたきによるアジト攻めの素早さ。
漂流島攻略へ向けた動きそのものもテンポよく進みます。
冗長なルパンは似合いませんので、物語の展開の早さ、コレは常に心掛けてほしいところではあります。


展開の速度はさておき、本作のポイントを一つ。

タイトルの『DEAD OR ALIVE』は、ご存知の通り「生死を問わず」というアメリカ西部開拓時代の言葉です。
カウボーイが牛を都会へと大移動させたり、金鉱・砂金探しで一攫千金を狙ったり、騎兵隊がネイティブ・アメリカンと殺し合いをしたりと、西部開拓は白人移民国家の黎明期の一幕です。

そんな時代を代表するのが、荒野を駆けるアウトローガンマン達。
所謂西部劇というのは、この破落戸共が拳銃ぶっ放して暴れ回る物語が大半です。

ネイティブ・アメリカンを殺して奪い取ったという『血生臭い侵略』を、カッコいいスターを使った暴力礼賛として、美しく正当化しているようですが、西部劇自体は(マカロニも含め)好きです。

閑話休題
そんな西部劇の破落戸共に対して、西部社会は悩まされます。
そこで取られた措置が、その首に懸賞金をかけること。
懸賞金は土地土地のシェリフ等から受け取ることができます。
(その土地の法の執行者であるシェリフ、即ち保安官は、今もアメリカで運用されている制度です。)
そんな賞金首の情報は、保安官事務所のボードに張り出される、お尋ね者の張り紙によって収集します。
その張り紙に記される一文、それが「Dead or Alive(生死を問わず(報酬を支払う))」ということです。


さて、そんなタイトルを冠する本作。
「生死を問わず」の言葉は、邪魔なルパンを賞金稼ぎに殺させるために、懸賞首として手配された為に使用されます。
ですが、実はこの言葉、直訳そのままのダブル・ミーニングとなっているのです。

「Dead or Alive」をそのまま読めば、「死んでいるまたは生きている」です。
コレは、本作のキーパーソンである「首狩将軍の手の者に殺されたパニシュ王子が、何故か生きている」という設定にも直結しています。
オーリは、生前のパニシュ王子と深い関係(恋仲)であったことがわかります。
しかし、王子は死に、「王子は乱心した国王に殺され、首狩将軍が仇を討った」という嘘に騙され、首狩将軍の為に暗躍する秘密警察の工作員となります。

悲しみに暮れ失意の日々を過ごすオーリ。そんな彼女の前に、昔と変わらない姿のパニシュ現れ、事態は大きく展開していきます。
オーリの前にパニシュが現れるのは、いつもほんの僅か。言葉少なで、オーリはヤキモキするばかりで、疑念は残り続けます。
彼は本当にパニシュなのか?本物のパニシュなのか?
結局のところ、パニシュは生きているのか死んでいるのか、それこそが本作の鍵となる点なのです。


以上までに述べてきた他にも、有機的デザインのナノマシンの生々しい不気味さや、容赦ない破壊描写含むバトルシーンのごちゃごちゃ感、オーリとパニシュの恋物語の結末等、大人の鑑賞に耐えうるルパン三世作品となっております。
大変良くできた作品ですので、再評価されてほしい作品ですね。
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