アキラナウェイ

プリンセスと魔法のキスのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

プリンセスと魔法のキス(2009年製作の映画)
3.8
Disney+の月額(お布施)の元を取る為に。未鑑賞だったディズニー作品を気まぐれに鑑賞。

殊にディズニー・プリンセス作品の中では、どうにも知名度・人気共に劣る作品なのでは?と訝しがっていたが、観てみると非常に個性的な魅力に溢れた良作だった。

ニューオーリンズのフレンチ・クオーターに住むティアナは、亡き父の念願だった自分のレストランを開店させる事を夢見ていた。そんな彼女に1匹のカエルが人間の言葉で話しかけてくる。曰く、ある男の呪術でカエルに変えられてしまったマルドニアという国のナヴィーン王子だと言う。

彼が人間に戻る条件は、「プリンセスとキスをする事」。果たしてナヴィーンは人間に戻れるのだろうか—— 。

今でいうポリコレの走りなのかも。

「ポカホンタス」「ムーラン」に続き、白人ではない主人公を打ち出そうとしてきたディズニーが、アフリカ系アメリカ人をプリンセスに据えるのは初めて。

舞台は音楽の街ニューオーリンズ。流れるのはジャズの調べ。湿地帯が広がる地域だけにワニを登場させたり、ヴィランはブードゥー呪術に精通していたり、とにかく西洋の物語に偏りがちだったこれまでのディズニーの常識をことごとく覆してくる革新的な姿勢が素晴らしい。

ティアナの幼馴染であるシャーロットが、金持ちでわがままで、適度にブス(失礼)で、手段を選ばず王子との結婚を成し遂げようとするので、さぞ性悪なのだろうと思ったら全然そんな事はなく、いつでもティアナの事を思うめちゃんこ良い子で好感が持てる。

呪術により街を駆け回る影の魔物や、怪しく笑う仮面の魔物達のヴィジュアルも、197歳の盲目のブードゥー教の尼僧ママ・オーディがノリノリで歌い踊るのも、楽しい〜!!

ニューオーリンズの川辺に棲むホタルのレイが夜空に輝く一番星を"エバンジェリーン"と名前を付けて恋焦がれる姿もじんわり沁みる。

今の時代なら、敢えて有色人種をプリンセスに据える事自体が少々あざとく感じてしまうのも事実。然し乍ら本作の米国公開は2009年。黒人の少女がプリンセスとなる事も、王子との結婚こそが幸せだとは思っていない事も、良い意味でディズニーの変革と捉えられる。

ティアナがせっかく可愛らしいのに、彼女もカエルに変えられてしまい、殆どのシーンがカエルのヴィジュアルというのが、何とも残念だったけど。

これは予想以上に楽しめて大満足。