すけきよ

フィール・ライク・ゴーイング・ホームのすけきよのレビュー・感想・評価

3.5
 2003年にアメリカでブルース生誕100年を記念し、音楽を愛する監督たちがアメリカの音楽のルーツであるブルースをそれぞれの熱き想いで綴った7本のドキュメンタリー集“THE BLUES Movie Project”の中の1本。全体の製作総指揮も担ったマーティン・スコセッシ監督がブルースの起源である西アフリカへ旅立つ。彼が選んだテーマはブルースの源流を求める旅。現役ブルースマンのコリー・ハリスをガイド役に、サン・ハウス、ジョン・リー・フッカー、マディ・ウォーターズら伝説のブルースマンたちの貴重なライヴ映像を織り込みながら、そのルーツを遡っていく。ミシシッピ・デルタ地帯へやって来たハリスは、そこで伝説のファイフ奏者オサー・ターナーと出会う。そして、その音楽に導かれるようにさらなる源流を求めて、彼は西アフリカのマリへ飛ぶ。

ミシシッピ川はいわばアメリカのガンジス川で、ジャズやロックの祖先たるブルースの源流、母なる音楽の水面である。
これは若きミュージシャンがが川の流れに沿いながらブルースの先達を訪ね歩き、源流を探す旅をする。
ブルースの起源は綿畑や農場での労働歌であり、辛い使役への嘆きであり、愛する女への胸の詰まるような想いだ。
ブルースマンたちは「誰にも奪えなかった黒人の文化だ」と口々に言う。
神から与えられた天恵である、と。
そこには日常の喜怒哀楽だけが込められ、金や名誉といった下心はまるで無い。
だから、歌詞やメロディーはよく聞くと単純だ。無作為の美しさ、カッコ良く見せようとしないカッコよさがある。登場する老師達には仙人のような余裕もある。
たどり着いた西アフリカ。マリやセネガルは音楽が盛んな国だ。アフリカンドラムや笛の音が人々の住む空気に根付いている。
「人が生きるのに芸術はそんなに必要ない」という人もいるけれど、
この映画を見ていたら、やはり音楽は天からの授かりものだと思えてくる。
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