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ウィンターズ・ボーンのmagic227のネタバレレビュー・内容・結末

ウィンターズ・ボーン(2010年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

アメリカでは貧しい家に生まれた子供の多くが軍隊に入ります。衣食住が保証され、きちんと勤めきれば恩給も貰えるからです。ただ、命の保証だけはありませんが・・・ ところがこの映画の主人公リーは、軍隊にすら入る事が出来ません。貧しい上に母親が心を病んでいる彼女は、幼い兄弟を養い守らなければならないからです。映画は、保釈中の父親が失踪したというところから始まります。もし父親が裁判所に出頭しなければ彼等の住む家は差し押さえられてしまうのです。それを避ける為には父親を探し出すか、父親が死んでいる事を証明するしかありません。こうしてリーの父親探しが始まります。閉鎖された村社会で誰もが口を閉ざす中、必死に調べて回るリーは周囲から疎まれ、ついにはリンチまで受ける事になるのですが、父親の行方は杳として分かりません。タイムリミットが迫る中リーに訪れる最期の試練とは・・・というのがストーリー。とにかく主人公リーの魅力がこの映画の全てと言っても良いでしょう。演じるのは若手実力派女優ジェニファー・ローレンス。この娘は目がやばい。暗くて力強い挑発的な目は、若い頃のリズ・テイラーを思わせます。これまでも、倒れても起き上がるヒロイン、辛い境遇を跳ね除けて新たな世界に羽ばたくヒロインはたくさんいました。しかし、リーの強さはちょっと違います。自分の運命に抗うのではなく、それをすべて受け入れる強さ、倒れないというより、倒れ方を知らないという感じの強さなのです。その姿からはある種の神々しささえ感じられる、だから観ている我々にはかける言葉もありません。 そしてもう一つ、この作品には丁寧な謎解きがありません。我々観客が知り得る情報は、主人公のリーが知り得る情報と同じであり、映画が終わっても、リーに分からない事は、観客も分からないままです。だからミステリーとして、この作品を観た観客は中途半端な感想を持つ事になってしまうのです。その反面、観客はリーの苦悩や苛立ち、痛みや怯えを、リーと同じレベルで感じる事になります。だからこそ、クライマックスでリーが直面する衝撃を、観客も同じように受けることが出来るのです。 この映画は観客に逃げる事を許さない厳しさを持っている作品だと言えるかもしれません。
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