オープニングが、歓楽街を歩く鶴田浩二の背中で始まって、のれんをくぐって居酒屋に入って女主人と話す、ここまでがワンカット。そこに流しの歌手がやってきて、カットが変わると、店内に他の客がいることがわかる。ひとりで背中向けて飲んでるその客が北島三郎なのだが、このさりげなーい登場の仕方が実に渋い。その直後、女郎を足抜きさせようとするチンピラ・近藤正臣の逃走がきっかけで、ふたりは改めて街の外れの裏路地で出会うことになるのだが、この狭い路地の感じも良いなあ。実に力の入ったオープニングで、タイトルが出る前の段階で既に満足してしまった。
で本編はというと、これまでの五作とは全く趣が違う。このシリーズでこんなのやるか、という暗く才気走った演出がたてつづけに出てくる。女衒に娘を売る親の不気味さや、北島三郎の出自を描くフラッシュバックなど、なんか見ているとだいぶゲンナリしてくるのだが、これぐらい濃ゆい情感を醸し出せるというのは演出の力だとも思う。
近藤正臣の兄貴である村田英雄の現・妻である北林早苗が鶴田浩二の元恋人なんて話になってきて、さすがに関係が絡み合いすぎでは……と白けてしまったが、北林と鶴田のかつての別れを回想するショットは灯台が効果的に使われていて、良い。