ナチス・ドイツによる占領中のオランダ。
ユダヤ人ラヘルの、”マタ・ハリ”としてのサバイバル。
ハリウッドから、母国オランダに”凱旋”した、ポール・バーホーベン監督作品。
戦争を描いているというよりは、戦争という極限状態を舞台に、サスペンスドラマを展開する。
そこにバーホーベンの持ち味、セックス、暴力を織り込む。
さらに、
ナチス=悪
レジスタンス=善
ステレオタイプに描かないのも、彼らしい。
ヨーロッパ各地からのキャストによる、英語、ヘブライ語、オランダ語、ドイツ語が入り乱れる演技も映画のリズムを変化させている。
さらにHBOドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ(GOT)』のファンとしては、ドラマ前のキャストを見れるのも嬉しい。
主役ラヘル/エリス役カリス・ファン・ハウテンは、GOTでは〈紅の女〉メリサンドルを演じている。
映画冒頭、ラヘルと行動を共にするロブ役ミキール・ハースマンはGOTではダーリオ・ナハーリスを演じている。
オランダ映画史上最高の予算を注ぎ込んだ、エンターテイメントと割り切れば、充分に面白い。
ただ、バーホーベン監督作品、『氷の微笑』や『ショーガール』などに共通するように、今作もスキャンダラスで目を引くが、見終わった後に、心にひっかき”傷”を残さないのも、共通する。