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ブラックブックのKSatのレビュー・感想・評価

ブラックブック(2006年製作の映画)
4.1
チョコレートとウンコにまみれまくった、ポール・ヴァーホーヴェン御大渾身の戦争映画。

オランダ映画史上最高の制作費をかけて第二次大戦におけるオランダのレジスタンスを描いたわけだからさすがに手加減してるよね、と思ったら、いつもより酷すぎて爆笑。ヴァーホーヴェンは金をかければかけるほと、ヴァーホーヴェンになる。

ナチスの連中も、ユダヤ人も、レジスタンスの連中も、そしてオランダ人も、主人公含めて誰一人善人なんていないし、誰一人として信用できない。最後の最後までホントに誰も信用できないから、サスペンスとしてもよく出来てるし、あの時代のオランダに生きるユダヤ人の立場を追体験できる。ホントにこんな感じだったんだろうな。

男は常に鼻の下を伸ばしてセクハラすることしか考えておらず、ヒロインはそれを利用して敵味方関係なく渡り歩き、生き残ろうとする、、、ってこれ、やってること「グレート・ウォリアーズ」と一緒やんけ。

でも、冒頭からヴァーホーヴェンの性格の悪さが炸裂してて凄い。隠れ家に棲む主人公が自分を匿ってるクリスチャン家族と一緒に聖書を唱えさせられたり、お粥にソースで十字を書いたり、チンコかと思ったらピストルだったり、クロロホルムのギャグとか、意地悪なジョークみたいなシチュエーションが次々出てくる。ラストシーンすらももはやギャグというか、決してユダヤ人側に寄り添いすぎてないのも憎たらしい。「私は、誰の味方でもありませんよ」っていう、ヴァーホーヴェンの決意表明にも思えた。

チョコレートとウンコを交互に出したり、チョコレートによって登場人物が打ち解けたり、チョコレートが命を救ったり(そのためにわざわざちゃんと伏線張ってるのも偉い!)と、オランダ人のチョコレート愛が爆発してるのも面白い。
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