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ブラックブックのodyssのレビュー・感想・評価

ブラックブック(2006年製作の映画)
4.5
【ナチもの映画の傑作】

ポール・バーホーヴェン監督作品。 

ナチ時代のオランダを舞台に、ユダヤ人であるが故にナチに家族を惨殺された美しい女性(カリス・ファン・カウテン)がレジスタンス・グループに身を投じ、グループの要請でナチ将校に近づいていくが、本当に彼を愛してしまい・・・というような筋書き。

第二次大戦中のナチへのレジスタンスについては、例えばフランスなどでもその神話性が明らかになりつつあるが、この映画でもレジスタンス・グループの内実をかなりシビアに描いており、また戦争直後の「戦犯」へのすさまじい報復ぶりや、連合軍とナチス将校の奇妙な癒着など、連合軍やオランダの正当性を相対化する視線がたいへん刺激的である。 

映画としては古典的な作りだが、裏切りにつぐ裏切りを描いた本作ではそうしたスタイルは一種安定性を確保するために必要だったのだろう。 内容の斬新さとスタイルの古典性で充実した作品に仕上がっている。
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