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ナインスゲートのkuuのレビュー・感想・評価

ナインスゲート(1999年製作の映画)
3.8
『ナインスゲート』
原題The Ninth Gate.
製作年1999年。上映時間133分、

ジョニー・デップ主演のオカルト・ホラーフランス・スペイン合作作品。
禁断の書と言われる“悪魔の書”を手にした書物ブローカーに起こる迷宮的恐怖を描く。
ロマン・ポランスキー監督作。

世界中の希少本を探す、書籍の探偵コルソ。彼はある富豪の依頼を受け、世界に3冊しかないという伝説の悪魔の祈祷書を探していた。
ニューヨークからスペイン、ポルトガルと祈祷書を追って旅するコルソ。だがそんな彼の周囲では、不可思議な殺人が続発してゆく。。。

余談ながら、作中で、リアナ・テルファーが吸っているタバコは『ブラック・デビル』って銘柄で、以前、某コンサート会場の喫煙ブースで知り合った人がこの甘え~いタバコを勧めてくれ今作品の事を話してたのを思い出した。

今作品は、超常現象をテーマにしているけど、
『エクソシスト』や『オーメン』のようなホラー映画ではなかった。
(あるいは、ポランスキー監督の初期の『ローズマリーの赤ちゃん』のようなホラー映画でもない。彼は小生と同じくオカルトを信じひんと公言しているが、このテーマには明らかに想像的な興味があるように感じる)。
幽霊も悪魔もモンスターも出てこないし、不気味な特殊効果もない。
吉幾三ならこの映画でなんて唄うだろう。
今作品は、エドワード王朝時代の怪談の巨匠、M・R・ジェームズの物語のような雰囲気を持ってて、その雰囲気は、多くのアクションが行われるしっかりした時代のインテリアによって高められてました。
ジェームズの物語はしばしば、超自然的な力を持つ品物(実際には本の場合もある)を中心に展開し、その正体は物語が進むにつれて徐々に明らかにされる。
ここでもそれが証明されていた。コルソは、当初は有利な取引の見込みのみに動かされていたが、バルカンやリアナなどが金銭的価値以外の理由でこの本を欲しがっている可能性に気付き始める。
ジョニー・デップは超常現象や陰惨な映画(『フロム・ヘル』、『パイレーツ・オブ・カリビアン』、『スウィーニー・トッド』)で活躍することもあるけど、これは彼のベストパフォーマンスとは云えへんかな。
こめかみに白髪があっても中年には見えへんし、個人的には演技も平板で面白みがないように感じた。
(監督との芸術的な衝突もあったとか)
しかし、映画全体としては、それなりに良い作品でした。
ポランスキーは、同じことを繰り返さず、すべての映画を前作とはできる限り異なるものにしようとする作家的監督のひとりやと思う。
本作品は『ローズマリーの赤ちゃん』だけでなく、25年前のポランスキー監督のネオ・ノワール作品『チャイナタウン』とも異なっている。
あの作品は、暑くて乾燥した夏を舞台に、南カリフォルニアの過酷でまぶしい昼間の光で撮影された。
それに対して今作品では、色彩はより暗く、より淡く、植生の状態からして夏に撮影されたものではあるが、秋の雰囲気が漂っている。
プロットは『チャイナタウン』(あるいは他の多くのネオ・ノワール)よりも複雑ではなく、時に動きが鈍いものの、不穏で曖昧な結末に向かって進むため、見る者の興味を失わせることはなかった。
『チャイナタウン』や『テス』、『戦場のピアニスト』とかのポランスキー作品ほど高くは評価できないけど、それでも興味深い作品であり、ショック療法に頼らずに超常現象スリラーを作ることが可能であることを証明するものなんちゃうかな。
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