大道幸之丞

ナインスゲートの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

ナインスゲート(1999年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

まず状況設定が面白い。
ポランスキーは好んで悪魔や黒魔術的な要素を扱う傾向があるが、今回は伝説の稀覯本『影の王国への九つの扉』の現存3冊のウチ、スペイン、フランスにある2冊を依頼により調査に出向く。

この依頼者バルカンがクセモノなのだが、道中で様々な危険に遭うも登場人物欄にも「謎の女」としか書かれていない金髪の美女がすんでのところでいつも救ってくれる。

しかも高所から滑るようにスムーズに降下したり、その描写から彼女が「人間ではないなにか」であることを監督は隠そうとしていない。
常にクールでコルソ(ジョニー・デップ)が「何かを識ってるのか?」と尋ねても釣れない返事を返すばかり。

そして最後の最後にそれまでそんな素振りさえ見せていなかった彼女が突如、城が眼前で燃え盛る中、車中で強引にコルソの唇を奪い野外でのそれこそ悪魔のような激しいセックスに及ぶ。

結局最後まで自身の正体を語る事はないが「最後の9枚目の版画」には彼女にそっくりの女性が描かれているあたり、動機はバルカンからの依頼とその報酬ではあったものの、真摯に『影の王国への九つの扉』究明に立ち向かい自らが9枚の版画通りの歩みを進めたコルソを悪魔は愛し護ったということなのだろうか。

本作で、ポランスキーは場面の空気感造りがうまい。「居心地の良い場面」が続き、この物語が終わってほしくない気にさえなる。

ストーリーとしては「なんじゃこりゃ」的で、決してスカッとする結論はないもの、心地の良い余韻が残る作品だ。