天豆てんまめ

2001年宇宙の旅 新世紀特別版の天豆てんまめのレビュー・感想・評価

4.1
いつまでも古びない普遍的な映画だ。

真夜中、部屋を真っ暗にして、ヘッドフォンで観る。

ゆっくりと流れる「ツァラトゥストラはかく語りき」の荘厳なオーケストラの響きと美しい宇宙空間と船内の映像に委ねるだけで陶酔感がある。

無重力の船内で、人がゆっくりゆっくり動いている、宙に浮くペンを取る、そのひとつひとつの動作でさえ、研ぎ澄まされたバレエの動きを観ているように、美しく心地よい。

後半、HAL9000の暴走と人間の攻防はゾクゾクする。HALの声もいい。じわじわと恐怖感を煽る。HALに知られないようにポッド内で彼の異変を相談するが人間の唇を読み取るHAL。その見つめる眼差しのようなアップが怖い。

クライマックスはハイパースペースの光の洪水をただひたすらに浴びる。目が疲れるし酔いそうになる。主人公の眼のアップと光を浴びてる私の眼が同時にパチパチしていき光の洪水の中、若干うとうとしたら、彼は静寂の部屋にいた。ここはどこ? その先のラストの解釈は正直、鑑賞中には及びつかなかった。

「インターステラー」はダイレクトに影響を受けている気がするし、「アレックス」のギャスパー・ノエが20回以上観ていると語っていたが、50年前に今観ても古びない映像美学と深淵な哲学を共存させた、ゾクゾクするようなキューブリック映画の美しさと恐ろしさを改めて没入体感できてよかった。

この広大無辺な宇宙に人智の及ばない生命体が全く一つも存在しないとは、逆に考えづらいという、そんな感覚の人の方が私も含めて多数だと思う。

「2001年宇宙の旅」で描かれた美しくも恐ろし気なイメージを浴びた後に、生きている間にそういったものと遭遇したいかと言えば何とも言い難い。まあ、会わなくてもいいような気がする。

それにしても、広大無辺の宇宙って永遠のロマンだ。