tomひで

2001年宇宙の旅 新世紀特別版のtomひでのレビュー・感想・評価

5.0
映画館に向かうのにこんなにワクワクして出掛けるのは久しぶり。キューブリック作品がIMAXの大画面で観られるなんて!先日の70mm特別上映には行けなかったので尚更テンション上がる。

観始めて思ったのは大画面で観ると地球や月などの惑星が絵になっているのが分かってしまう感じにちょっと戸惑った。最近のCGで作るリアル宇宙空間を見過ぎてしまっているからか…。

しかし、人類の夜明けから骨が宇宙船になる映画史に残るモンタージュ、美しき青きドナウを背景に宇宙ステーションへカメラが流れていくオープニングが本当に素晴らしすぎる。映像と音楽が掛け合わされて生まれる芸術。まさにこれが映画。

今回久しぶりに観直して思うのは、こんな訳の分からない映画(ゴメンナサイ)の企画を通し、そしてよく完成させたなという事。恐らくキューブリック自身も手探りだったと思うし、完成させた後も自身で説明する事は出来なかったと思う。この映画を型にはめて説明する事はこの映画の魅力を失わせる事にしかならない。

よく言われる「理性で観る映画」「感性で観る映画」の違い。この映画は間違いなく後者の「感性で観る映画」。観た人が百人居たなら百通りの2001年宇宙の旅があっていいのだと思う。

映画評論家の町山さんがとても詳しくこの映画を解説している。その解説はとても分かり易い反面、分かってしまう事でこの映画の魅力が薄れてしまう事にも気づく。

この映画はキューブリックやアーサー・C・クラークが創ろうとした意図を超えて、新しい感覚や感情、制作者の意図とは違う意味合いを独自に受け取った観客だけが更に楽しめる映画なのだと思う。

モノリスの正体、赤ん坊に還るラストシーン、映画の中で説明的演出を極力排除していったキューブリック、これは本当に英断。「これはこうですよ」なんて作っていたらこの映画は映画史に残る作品にはなっていない。今から50年も前にこんな映画を完成させたキューブリック、ホントに凄い!

因みにIMAX上映版の画角が気になって帰ってBlu-ray版でチェックしてみたら画面の両サイドがやはり少し切られていました。キューブリックが生きていたらこんな上映は許されなかったのでしょうが、大画面で観られた事に感謝です。

HAL「過去の例が示すように、ミスを犯すのは人間です」
tomひで

tomひで