猫脳髄

キャビン・フィーバーの猫脳髄のレビュー・感想・評価

キャビン・フィーバー(2002年製作の映画)
3.4
U-NEXTで配信が始まったイーライ・ロスがナビゲーターをつとめるホラー映画史ドキュメンタリー「ヒストリー・オブ・ホラー」シリーズ(2018,2020,2021)が素晴らしすぎて、ロスへのリスペクトとして本作を鑑賞。

いわゆる「パンケーキ少年」の奇行ばかりに言及されるが、ロスの長編初監督作品にして、彼のホラー映画マニアぶりが遺憾なく発揮されたサンプリング・スプラッター。

生意気な大学生連中が、山中のキャビンで謎の奇病に侵されてしまうという筋書きで、大枠を「死霊のはらわた」(1981)から借りつつ土地のプア・ホワイトたちとトラブルになりながら逃走を試みるさまは、まるで「脱出」(1972)ではないか(※)。さらに、ハーシェル・ゴードン・ルイス調に旋回しながら、ラストに向かう生き残りを待ち受けるシークエンスはさながら「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」(1968)である。

もちろん、出演女優たちを脱がせるお約束は忘れていないし、あちこちに未回収のエピソードをわざととっ散らかす(ロス自身もそのひとつとして立ち回る)。いってしまえばタイトルもダジャレのようなもので、奇病もある種のマクガフィンだろう。重要なのはガキどもが血みどろで全滅する描写であり、それが陽気なカントリー・ミュージックに載せて世界に拡大再生産するであろうバカバカしさにある。

奇病がモチーフゆえ、ややサスペンスが息切れするところもあるが、それも玄人らしい見えないことへの恐怖を演出する意図があったのかもしれない。大成功とはまでいえないが、ホラー・ヒストリーへの目配せがニクい佳作である。

※同作にも冒頭で筋とは無関係に不気味な子どもが登場することを指摘しておく
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