みてべいびー

ラスト、コーションのみてべいびーのネタバレレビュー・内容・結末

ラスト、コーション(2007年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

チアチー「生きて会えただけ十分よ。あなたへのお土産はないの。」
イー「会えただけでいい。」
映像が綺麗。内容も悲哀に満ちてて美しくて好き。街並みがリアルだし、衣装も美術も凝ってる。セックスシーンが過激で話題になったみたいだけど、結構体の部位とか顔を映すことが多くて全体像は見えにくいからか、そこまで生々しさは感じなかった。
田舎から香港に疎開してきた素朴な女学生チアチーが、抗日劇団に参加したことからスパイ活動の真似事を余儀なくされ、トニーレオン演じるイー氏を誘惑する「マイ夫人」として大人にならざるをえない状況に陥っていく。戦時中は子供から子供時代、青春を奪う。まだ二十歳にも満たない彼女がイー氏と出会い、三年後上海で逢瀬を重ねるようになるまで、彼女が置かれる状況は過酷で油断も隙もない。その中で彼女は常に賢く堂々としていて、年の離れた冷徹なイー氏に引けを取らない。彼女が彼を見つめながらストッキングを脱ぐところと歌う場面は、妙に艶やかで可憐で哀愁がある。自分には到底真似できない。現代に生きているからこそ、きっとそこまでする価値を見出せないし、自分を捨てられない。
舞台が終わったあとチアチーが仲間たちと二階建てバスに乗って、窓から頭を出して雨に髪を濡らす場面が大好き。そのあとクァンが彼女の後ろの席に座って彼女を見つめるのもめっちゃ青春だと思った。三年後アジトで彼がキスしたあと、「なぜ三年前にしてくれなかったの?」と問うチアチーが切なかった。あの頃ならまだ後戻りできたのにね。
タンウェイの背が高いっていうのもあるんだろうけど、どうしてもトニーレオンが小男に見えて気になってしょうがなかった笑、特に宝石店で逃げる場面。他の作品で観ても全然気にならなかったんだけどな。多分小柄で細身だから、スーツの袖がストンとして見えて着られちゃってる感が拭えない。でも彼のタンウェイを見る眼差しがすごくて引き込まれる。なんだろう、涼しげなのに射るような鋭さがあって、それでいてどこを見てるのかわからないような、彼女を通り越して奥を見つめてる感じがした。それとは対照的に、宝石店で指輪を着けた彼女の手を愛おしそうに見るとき。あんな風に見られたらしょうがないよねもう。彼女が「逃げて」と口走ったあと、一瞬で全てを悟り現実に引き戻されたような目も素晴らしい。
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