サイコ系映画は、完全なピラミッド社会である。毎年雨後の筍の様に現れては消えていく下級サイコパスの上に、マニアの間では有名な中級サイコパスの一群がある。
そしてその上には、誰もが名前を知ってる様な上級サイコパスが存在するのだが、ピラミッドの様に上に行けば行くほど人数は絞られてくる。そしてその最上部に凛として鎮座しているのが、ハンニバル・レクター博士に他ならない!
800本目のレビューで「羊たちの沈黙」を選んだ流れで「ハンニバル」「レッド・ドラゴン」と映画の製作順に3日連続でハンニバル・レクターと付き合ってきたので、さすがに疲れた😅
改めて見てみると、今更ながらアンソニー・ホプキンスとハンニバル・レクターの運命的な出会いに感謝の念を持たざるを得ない。そしてこの俳優は、その語り口、仕草、表情どれを取ってもメチャクチャうまい(何を今さら😅)
そのホプキンスが演じたハンニバル・レクター三部作の原点にして、シリーズを締めくくる最終章。「羊たちの沈黙」で脚本を手がけたテッド・タリーが復活して前作「ハンニバル」で気になった序盤のモタつきも解消された。
本作でのレクターの1番の見せ場である逮捕までの経緯をタイトル前のプロローグで簡潔に見せる手際の良さで、本題の〝哀しき怪物〟レッド・ドラゴン(レイフ・ファインズ)の物語に一気に引き込まれる。
このレッド・ドラゴンことフランシス・ダラハイドと彼を追い詰める元FBI捜査官のウィル・グレアム(エドワード・ノートン)が本作の主人公だが、この2人の運命までも拘禁中のレクターが狂わせていく。
過去の虐待から精神を病んだ〝哀しき怪物〟ダラハイドの前に現れ、一筋の光となる盲目の天使を演じたエミリー・ワトソンがいい。特に麻酔で眠る虎の体を優しく撫でる場面では、慈愛と官能に満ちた恍惚の表情を浮かべ、彼女によって自分は生まれ変われるかもと思い始める怪物との静かな演技合戦に痺れる。この部分だけ切り取れば、まるで世間の片隅に追いやられた2人の純愛映画を観ているようだ。
更に演技合戦で言えばホプキンスとノートンの新旧実力派俳優の脇をハーヴェイ・カイテルとフィリップ・シーモア・ホフマンが固めるという正に鉄壁の布陣😊
後半はダラハイド、グレアム、レクターの三つ巴の対決が複雑に絡み合い、驚愕の結末を迎える。
そしてレクター三部作の最終話にも関わらず、次への繋がりを期待させるラストシーンは、ハンニバル・レクター無限ループへの招待状だ。
公開時に劇場で鑑賞した映画をDVDにて再視聴。