せみ多論

レッド・ドラゴンのせみ多論のレビュー・感想・評価

レッド・ドラゴン(2002年製作の映画)
4.0
羊たちの沈黙シリーズ三作目。時系列としては羊たちの沈黙より以前の話で、冒頭でレクター博士がお縄になるところから物語は始まる。しかしあんだけ撃たれても死なないってのは、高齢にしてはとんだタフネスですな。

シリーズお馴染みの、捜査官・レクター博士・犯罪者の3関係は、何と言うか見ていて安心感があるというか、土台としての面白さとして個人的にはとても好き。

そして今回の犯罪者役の、レイフ・ファインズの演技がとても素敵。初代羊たちの沈黙のバッファロービルとはまた違う、危うさや異常性と同時に、とても悲しげな憂いを帯びた表情が印象に残る。彼は異常な犯罪者ではあるのは間違いないが、そうなってしまった過程や家庭環境は悲しく、それをぬぐいたい彼と、もう一つの異常性の塊のような彼が揺れる様はとても見ごたえがある。

本作の裏の主人公は犯罪者であるこのフランシス・ダラハイドだと思う。彼がもしかしたらと思うことが、やはりつまるところ叶わない、彼は祖母の呪縛から逃れることができなかったと考えるととても悲しい気持ちになる。彼がもっと早くリーバと出会っていれば、彼が自身のトラウマや過去から脱却する手段は、あんな残酷な形をとらなかったのではと思ってしまう。

しかし本作はあまりレクター博士は目立たず控えめですね。

と言っても、私はそれでもとても楽しめたのです。
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