イランの巨匠ムフセン・マフマルバフ監督作。英語字幕にて。
イラン国内では｢全てのイラン人が観た｣と言われるほどの空前のヒット作だそう。
イランの隣国アフガニスタンからの難民ナシムは子供と重病の妻を抱えて貧しい生活を送っていたが、妻が費用のかかる総合病院への入院が必要に。
入院費を稼ぐため、ナシムの友人が興行師にアフガニスタンで元サイクリストのチャンピオンだとナシムを売り込むと、自転車に24時間 x 1週間乗り続ければ多額の賞金が稼げるという話になり、小さな広場の中を自転車で周回し続ける見世物が始まる。
見物客、賭け師、屋台、医師、金持ち、領事館...喧騒の広場。
成功を信じてサポートする人々と、止めさせようと妨害する人々。
この中で、ナシムは1週間、自転車をこぎ続けられるのか。
ナシム一家を含め、生活に苦しむ難民の人々が随所で出てきます。
ナシムの息子が仲良くなる、手相占いが得意なジプシーの母の幼い娘を演じたのが『りんご』『ブラックボード』を監督したマフマルバフの娘サミラ・マフマルバフ。
前半に登場する、大きな樽のような中の垂直な壁を遠心力を利用してバイクで走行しながらライダーが曲芸を見せるスタント（Wall of Death）は作中では異質な感じもしましたが、後半に悲劇が訪れるこのライダーも難民だったんでしょうね。
映像や演出は荒削りですが、ラストのナシムの姿が沁みました。
