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地の群れのクリームのレビュー・感想・評価

地の群れ(1970年製作の映画)
4.0
『野火』『ゆきゆきて神軍』と観て来たが、これも凄かった。昭和の邦画のパワーに圧倒される。この映画も衝撃作でした。日本の戦争中、戦後は、想像以上にキツかった。今まで、知らなかったが、多くの人が知るべき歴史だと思います。ただ、この映画はかなりキツイ映画なので、色々知ってから観るべきだと思いますが…。
舞台は佐世保。朝鮮、部落、原爆被害者が、それぞれを差別し合う恐ろしい世界を町医者の宇南の目を通して、戦後日本の闇を過激に描いています。被爆直後の映像や被爆者の描写などショッキングな映像もありました。




ネタバレも何もないけど、一応↓




医者の宇南自体もかつて朝鮮人の少女を妊娠させ、その姉に迫られるも逃げたり、被差別部落の出身である事、被爆者である事、それらを隠して結婚し、ゆえに子供を作らず妻と上手くいかない等、この映画の問題全てに関係している人物。だけど、そんな彼も多勢に無勢、傍観するしかないのが現状だった。
彼の患者の一人は、原爆症が出ている娘。しかし母親は、自分は被爆してないから、そんなことはありえないと言う。被爆者だとバレたら差別されて、娘は結婚も出来なくなるので、命が危ないから本当の情報を教えて欲しいと言われても頑なに被爆していないと言い張る。
別の娘徳子は、レイプされた証明書を書いて欲しいと言うが、自らが被差別部落出身なので、自分の事は何も語らない。
徳子は、相手が原爆被害者の集落「海塔新田」(ピカドン部落)に住む男と知り、家を突き止め訪ねる。犯人の父親は、相手が部落出身とわかり、追い払う。その後、徳子の母が復讐に向かい、犯人の父親に向かって「私達はエタやけど、あんた達の血は腐っとる」と言い放つ。それを聞いていた新田の者達から石を投げられ、トタンも投げられ母は亡くなる。
その後、最初にレイプ犯と疑われた信夫が、新田の者達から裏切り者と追われ、逃げ出した先で今度は部落民達からも殺された徳子の母の復讐とばかりに追われ、その先には、普通の生活をしている主婦達や米軍の姿が映し出され終わります。カオス。
戦前の朝鮮人との問題、原爆により被爆者部落が出来て、被差別部落と被爆者部落という新たな対立が生まれる。
戦後昭和の成長期の裏にある闇を世間に知らしめる貴重な映画でした。
冒頭、カゴの中に大量の鼠、そこへ1羽の鶏、鼠が鶏を食い尽くす。何だこれは?と思って観ていたが、ラストは、そのカゴが炎上し焼け焦げた鼠が映る。印象に残る映像だったのだが、よってたかって、異質なニワトリを排除した鼠も結局、炎で焼き払われ焼け焦げた死骸になった。メタファーなんでしょうね。
はぁ、観て良かったけど、しんどい作品でした。

※被差別部落(同和地区)問題は、現在でも日本各地で無くなっていません。
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