Lila

レインマンのLilaのレビュー・感想・評価

レインマン(1988年製作の映画)
4.5
35周年記念で映画館上映していたので観てきました。昔から好きで、いつぶりだろう?ってぐらいに観たのですが、年齢を重ねた今見たら、名作中の名作、傑作でした。

まず、ダスティン・ホフマンの演技が怪物級なのは言わずもがな。これは誰しもが分かる事で、この作品一本でダスティンの唯一無二さは証明できてます。約1年かけて役作りした事が当時話題になってましたが、その肝の入れようが職人技に磨きをかけ、佇まいから存在感含めてバキバキに仕上がってます。

この強靭なダスティン軸だけでも十分なのにも関わらず、それを横で支えるトム・クルーズもとんでもないレベルだったことを改めて再認識しました。

トムが演じるチャーリー、家庭の育ちからくる複雑な内面描写が露骨で、きめ細やかです。血気盛んで短気、周りにも傍若無人な態度を取る乱暴者に見えるものの、不器用で全部真正面から真剣に行きすぎるからだとよく分かります。彼女と喧嘩する時も徹底的に向かい合い、医者や弁護士にも食ってかかり、自閉症の兄と話すときすら会話を諦めません。普通だったら、放っておくであろうところも食らいつきます。

もちろん、映画の展開的に無視はできないのでw、脚本のためと言えど、チャーリーのような人はこういうコミュニケーション取る印象です。

真っ直ぐ過ぎて、ぶつかりすぎて、ハレーション起こすタイプなんですよね。コミュ力問われてしまいますが、奥底は傷ついてて自己防衛ばかりしてしまって、繊細で、正直で、愛されたくて、理解されたくて、且つ自分の思いのためならとんでもない忍耐力すら発揮します。そこの信憑性を完璧に体現するトム・クルーズの実力はアクション俳優に留まらない!敵役過ぎました。真摯な青い瞳を持ちながら、若さ満載の美しいイケメンなので、女性にお困りでもないから、そこで寂しさを埋めてきたのでしょう。そんなところも輪をかけて完璧でした。

彼女役のスザンヌ、アメリカ人ではなく、敢えてスペイン系の彼女を置いた配置も最高です。可愛くて、情熱的で、愛情あって、不安定で、色々理解できていない。チャーリーがなぜ彼女といるかも分かります。

道中の七転八倒を超えての、ラストシーンは何とも言えません。想いはあっても、チャーリーには、自閉症患者の面倒はみきれません。想いだけでどうにかなる話でもない。

ダスティン演じるレイモンドが、弟といるか施設に戻るか聞かれて、両方「yeah」と言うものの、絶妙な間の差があります。弟といることは悩み、施設に戻るのは即答でした。判断できないと周りに言われますが、判断できてます。

チャーリーが「彼は思った以上に色んなこと分かってる」と言ったことを証明するかの展開、その後の頭を寄せるシーンは涙が出ます。レイモンドはチャーリーの言う事は聞くので、全てを理解できなくとも、揺るぎない信頼と愛はあります。でも一緒にいる事がベストではない。安心感は得られない。でも弟の事は思う。それが兄という生き物で、あのシーンの「兄弟」描写は美しくて好きです。

最後の別れの電車のシーン。とても現実的で、ぶつ切り感があって堪らない。それぐらい唐突な1週間のロードトリップで、レイモンドはまたいつも通りの日常を過ごします。でも、チャーリーはもう孤独ではないはずです。私たちが知れるのはそこまで、っていう終わり方が好きです。

「レインマン」に全て詰まってるタイトルにも感服です。
Lila

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