雨のなかの男

レインマンの雨のなかの男のネタバレレビュー・内容・結末

レインマン(1988年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

U-NEXTで鑑賞。言葉で通じ合えない兄と旅をするという、二人でありながらも弟のある種の孤独感を描いたロードムービー。ロードムービーがジャンルの性質上、家庭の置き去り、あるいは崩壊から始まるのは去ることながら80年代を代表する『パリ、テキサス』同様、しっかりとその家族の再生を描いていることは興味深い。70年代はいかにして家庭から離れ、ジェンダーの役割や束縛から逃れるかが主題であった。ピーター・フォンダは親子の確執を号泣しながら語り、ジャック・ニコルソンは父との関係性を修復できぬまま、自ら父になることを拒絶し、妊婦の妻を置き去りにする。シャーリー・ナイトは旦那に何も言わずに自己の性を見つめる旅に出る。かつて『オズの魔法使い』でドロシーが言った「やっぱり家が一番ね」という言葉も虚しく、メロドラマ的な帰結すらない非現実への逃避的物語は文字通りの道半ばで映画が終わることが多かった。かたや『レインマン』は兄弟としての失われた時間や関係性を取り戻す回復の物語を映し出す。シロップが先に出ているという、2人にしか分からないようなジョークで兄弟の心が通じ合う場面が何よりも素晴らしい。皮肉にも「やっぱり家が一番」の兄は非現実的な旅から現実の生活に戻るが、本作が悲劇的ではないのは、まさに兄弟の関係性がその先も続いてくことが示唆されるからだと思う。
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