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八つ墓村のsymaxのレビュー・感想・評価

八つ墓村(1977年製作の映画)
3.7
"もし、今度の事件が祟りだとすると…400年前に8人、それが28年前には32人…これは4倍になっとりますけん…今度また4倍だとすると…128人…八つ墓村の住人全員が殺されることに…"

新聞の三行広告に記された自分の名前…

寺田辰弥は、大阪の弁護士事務所で、祖父井川丑松と対面し、自分が岡山の名家・多治見家の跡取りである事を知る…だが、祖父は辰弥の面前で毒により絶命…

自らのルーツを知るべく、辰弥は八つ墓村へ…

多治見家の財産を虎視眈々と狙う親類縁者の目の前で、またしても毒による殺人事件が…

私立探偵金田一耕助と共に、血に汚れた多治見家の秘密が明かされる…

"祟りじゃあ〜"

一大ブームとなった宣伝文句…それはそれは美しくも恐ろしき、山崎努、小川真由美そして夏八木勲の熱演により、当時の小学生以下の子供たちのトラウマとなった伝説の作品…私も恐れ慄いた一人であります。

膨大な登場人物と複雑な構造を持った原作に挑んだのは、監督・野村芳太郎、脚本・橋本忍、音楽・芥川也寸志の"砂の器"トリオ…

時代設定を現代に移し、登場人物を大幅にカットして、シンプルな構造にした事…そして何より大胆だったのが、"尼子の祟りを利用した殺人事件"を"尼子の祟り"とする大胆な設定変更により、謎解きミステリーというよりも、おどろおどろしいオカルト・ホラーにした点に本作の成功があるのだと思います。

なんせ原作は、寺田辰弥の一人語りで進んでいくので、本作の主人公はショーケン演じる寺田辰弥なのです。

渥美清という意外な選択肢の金田一耕助は、狂言回しにすぎない。

一般的に、金田一耕助と言えば、石坂浩二か古谷一行のイメージが強く、"寅さん"としか見えない渥美清はミスキャストでは?との思いが強いのですが、久々に鑑賞した後では、渥美清でしかあり得ないとの印象を持たせるのですから…流石の演技力でございます。

今作のイメージが強過ぎるが故に、その後、市川崑で作られた“八つ墓村"はインパクトが弱いし、本作で幼い頃の辰弥を演じた吉岡秀隆が金田一を演じた"八つ墓村"は、良かったのですが、やはり野村芳太郎版には勝てないという展開に…

怪作なれど名作…
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