地底獣国

八つ墓村の地底獣国のレビュー・感想・評価

八つ墓村(1977年製作の映画)
3.6
原作から登場人物を統合、削減して2時間半に収めるところは脚色の基本の様な手技ながら、注力しているのはミステリではなく、「猟奇」と「怪奇」‼︎終盤なんの前振りも無くヒロインが憑物状態になるわ、推理を裏付ける証拠について尋ねられた金田一がそれには答えず、延々と祟りの傍証となる様な調査結果(事件と直接関係無い事なのに!)を語るは、挙句アノ展開だわ、実にどうかしてる脚本。

しかしながら、東宝の「悪魔の手毬唄」の興行成績が「犬神家」の半分程度に留まったのを踏まえて「先行作品と同じカラーではいけない」と判断した橋本忍氏の感覚は間違っておらず、実際本作は「犬神家」を上回る興行収入を叩き出している(まあそこでオカルトに振るというのが「鬼の筆」ならではだが)。

勿論当時の横溝作品映像化ラッシュという状況から切り離して見てしまうと「何を見せられてるんだ」とポカーンとなるのも無理はない超展開だし、全体的な画の力とか「田舎怖い」感とかが市川崑演出より見劣りするのは否めない。

とはいえ、前半の凄惨な落武者狩りのくだりや、都井陸雄に憑依されたかの如き怪演を山崎努が披露する殺戮シーン、鍾乳洞内の逃走−追跡、祟りの終わりを見届ける者たちの顔、顔、顔と、情念の煮凝りのような野村芳太郎演出にはやはり圧倒される(それが更に遺憾無く発揮されるのが「震える舌」)。ついでに言うと自分は作品自体のクオリティに関わらず、クライマックスやラストで屋敷とかが崩れ落ちたり焼け落ちたりする場面の出来が良いとスコアが甘めになる質なんでご容赦いただきたい。

余談その1:横溝正史自身の考えでは渥美清の方が石坂浩二より金田一のイメージに近いらしい。

その2:和歌山から大阪を経て滋賀に行き、そこから京都に戻るまでの行程を10時間程で終えた金田一の機動力よ。しかも翌朝早くには篠山まで移動しているという…
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