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ゴジラ対ヘドラのmitakosamaのレビュー・感想・評価

ゴジラ対ヘドラ(1971年製作の映画)
4.7
♫水銀コバルトカドニウム〜♫のヘドラです。
昭和ゴジラ後期の超異端作かつ最高傑作!
ヘドラこそ正にゴジラに次ぐ怪獣のアイデンティティーを持っている。
ゴジラが核兵器に対するメタファーであり、映画により反核のメッセージを伝えたことでキングオブモンスターの称号を得たのに対し、ヘドラは70年代の社会問題になった公害のメタファー。
人間の負の遺産を表現することで怪獣は真の存在感意義を獲得できるのだ。ゴジラ以降は多かれ少なかれゴジラの亜流だったのに対し、ヘドラはその範疇外から初めて出た怪獣だとも言える。

そしてクリーチャーとしてのヘドラの、圧倒的な存在感。鉱物で出来たオタマジャクシのようで、分裂・合体が自由になる幼体。
そして巨大化した姿の禍々しい異形。縦についた赤い目に不定形な泥状の肉体。
煙突の煙を吸い、ビルを素通りすれば建物を腐らせ、自動車を飲み込み、硫酸ミストを撒き散らしながら飛び生きた人間を骨だけにして溶かしてしまう。ミサイル等の物理兵器は身体を通り抜けて効果ない。
完全にヤバいスペックの奴ですわ。
そして全編に流れる前衛的でサイケデリックな演出。アニメのカットイン。表現上の大胆さがヘドラのキャラクター性を更に引き立てる。

監督はドキュメンタリー出身だという坂野義光。ゴジラシリーズは今作のみなんだよね。
恐らく描きたかったのはヘドラそのものであり、ゴジラ自体は割とどうでも良かったんだろうな。
それゆえにヘドラ以外の描写はテキトーと言うか、子供向きに割り切ってる。ゴジラの登場するときは脱力系のBGMが鳴り響き、怪獣同士が戦っててもギリギリまで気づかないし、子役は棒読みだ。
そしてゴジラは放射能を吐き出す推進力で空を飛ぶ。田中友幸にやっちゃダメだと言われてもやっちゃった。だから次の作品を撮らせてもらえなかったんだろ(笑)
それでも今作にかけた想いは良く伝わる。子供向き路線のゴジラ映画というフォーマットに乗せれば表現したかった当時の社会問題に対する提示が出来たのだから。
恐らくその情念のみで撮られたが故にヘドラは恐ろしい。冷酷かつ怒りに満ちた赤い目で街を、人を、ゴジラを見下ろす姿は、正に公害に対する社会の怒りに他ならない。
だからヘドラは傑作なのだ。たとえ柴俊夫が訳わかんないキャンプファイヤーをやってもだ。

人間のヘドラに対抗する策として巨大な電極板で乾燥させると言うのも面白い。

願わくばヘドラは今の技術でリメイクしてほしいな。ゴジラの出ない、ヘドラ単体の映画。CGで動くヘドロ状の生命体はビジュアル的にも見応えあると思んだけどなぁ。そして中国などをみても現在進行形で公害問題は残っているのだから。
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