レオン

汚れた顔の天使のレオンのレビュー・感想・評価

汚れた顔の天使(1938年製作の映画)
4.1

ハリウッドは 85年前 でも素晴らしかった!(アマプラ見放題★4半作品♪)
1938年作 ジェームズ・ギャグニーの名作♪
作品自体も素晴らしいが、作り方もうまいな~と感心する。
たった98分に2人の悪ガキが全く違う道を歩み、その分野で名声を得るまでの成長と顛末を短時間で魅せる。 
時の経過もナレーションより、新聞の見出しでどんどん加速される等、演出もタイムパフォーマンスがよい。

キャグニーという役者は平素でも早口らしく、当然台詞も早口。それに感化されたのか他の役者もやや早口に♪
さらに無駄のないシーン展開で、物語が的確にどんどん進む。 
が、子供達が賛美歌を歌うシーンやバスケをするシーン等は十分に尺を取り、台詞以外に訴えたい物を見る者に考えさせる。

それに完璧なキャスティングに相まった人物描写が素晴らしい!
主演ギャグニー(役名ロッキー)は身長165cmの小柄に全く見えない存在感で、そのアクの強い顔はギャング役にピッタリだが、自らの行動に後悔なく命も厭わない一本気な人物を見事に演している。 (アカデミー主演男優ノミネート)
神父役パット・オブライエンは目を見るだけで、良心が伝わるような風貌で、重厚な演技。
ハンフリー・ボガートは「カサブランカ」の主演以前で、胡散臭さを醸す脇役を好演。

そしてギャグニーを慕う、悪ガキ少年6人の子役達も素晴らしい!
顔をみるだけで、性格や考え方も分かるような子を選び、その通りの描写がされている。
一番悪そうな子は言葉遣いも悪く悪態、一番しっかりしてそうな子がやはりリーダーで、その役柄を理解してその通り演じている。

さらには、町中の老人等ほんの1~2秒しか写らないエキストラでさえ誰一人違和感なく、その場にいる本物の人物に見える。
カジノでルーレット周りにいる美女も、高級社交場に相応しい気品ある女性が選ばれている。
この辺がハリウッドのスゴイところで、役者の層がエキストラでさえ日本のそれを数段上回る。

建物を警官隊に囲まれるシーンなど遠回しの映像が多いが、リアルに上手く見せている。
当時、制作費がどのくらいかは分からないが、警官隊や野次馬の数から使うべき所には十分金を掛けていて、それなりの金のかかった作品に思う。

徐々にシリアスになる物語展開にも途中、女性から軽い反撃をくらうシーン等で"笑い"のスパイスも入り、上記少年達を諭すシーン等に"人生の教訓"的な表現もあり、ただのギャング物語には終わらない。

そして終盤、相反する立場にありながら、互いを尊重する二人は、神父からロッキーに願い事が提案されるが、それが今作のタイトル「汚れた顔の天使」を意味する。

なんとも意味深く、目頭が熱くなる結末・・・。
意味不明な描写もなく、突拍子もない事件も起こらず、まさに正攻法の顛末。
これが優れた脚本家の書く物語だ。

昨今、見る側の考察により、捉え方が変化する不確かな描写や、突発的な事件に逃げる、
私的に "小細工”と感じる作品より、誰が見ても"同じ感銘"を受けるような今作を尊重する。
「傑作」とまでは評価しないが、十分名作で秀作。
あっという間に見終わるので是非、ご視聴を♪
レオン

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