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ピアニストのkekqのレビュー・感想・評価

ピアニスト(2001年製作の映画)
3.8
厳格な母親に育てられ、ピアノに人生を捧げた一人の女性が、若さ、才能、知性、ルックス全てを備えた男と恋に落ち、"本当の自分"を見つけ出していくラブロマンス。病的に倒錯した愛情をこれでもかと見せつけられ、汚く、醜く、「王子様が現れればいいというわけではない」という謎の現実をまざまざと突きつけられる毒のような映画でした。

"変態であること"の説得力が凄まじく、抑圧され歪んだ性への渇望が様々な形で表現(処理)されていきます。
主人公の過去は多く語られず、かわりに自らの教え子にかつての自分を投影し、自分が失った未来の可能性に嫉妬し、間接的な母への復讐を試みる心理描写もエンターテイメントギリギリの不愉快さ。名門音楽大学のピアノ教師という設定も絶妙でした。

ほぼ全編主人公を追うシーンで構成されていますが、主人公が全く自分をコントロールできていないのでどっちに転ぶか本当にわからず、最後までずっとスリリングです。

狂いきることもできない苦しみを描いた映画。エモーショナルでロジカルな良品でした。
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