宇尾地米人

メイフィールドの怪人たちの宇尾地米人のレビュー・感想・評価

メイフィールドの怪人たち(1989年製作の映画)
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 "BURB"というと、郊外、住宅地ですね。これはメイフィールドという閑静な町内を舞台にしたブラックコメディです。『グレムリン』や『インナースペース』を監督して成功を収めているジョー・ダンテと、『スプラッシュ』や『ビッグ』といったコメディで人気絶頂のトム・ハンクスがコラボしているところが注目ポイントです。トムにとっては背筋が凍るような恐怖体験をする主人公という珍しい役どころで、重厚な演技を披露してきた彼の長いキャリアの中でも、ホラーコメディである本作はなかなか貴重な一本ですね。仲良しご近所さんに『恋はデジャ・ブ』のリック・ダコマン、コチコチ軍人に『帰郷』などの大御所ブルース・ダーンが扮して、3人が連れ立って怪しいお隣さんの秘密に迫ろうとする騒動が描かれます。

 前作『インナースペース』ではILMの技術によって驚きの体内映像を見せてきましたが、本作はホラー。隣人への不信感という住民の心理、テレビで有名なホラー映画が映ったり、『センチネル』やエルム街の名前が出てきたり、いかにもこの監督らしいホラーお遊びがあらわれます。この新しく引っ越してきたクロペック一家というのが、近所付き合いは一切なく、庭は荒れたまま、夜中に変な物音がしたり、穴掘りを始めたりと話題なんですね。一体どんな人たちなのか。すると、近所のウォルターじいさんが突然行方不明になる。まさか、彼に何かあったのか。クロペック家が関わっているに違いないと、血だらけの惨劇を予感して男3人で証拠探しを始めますが…。

 個人的に、怪しげで怖そうで、ハラハラするあまり笑ってしまうような映画が一番好きなんですが、ジョー・ダンテはそういう作りが非常に巧い。さらに脚本は『死霊のかぼちゃ/13回目のハロウィン』のダナ・オルセンだから、これが面白いんですね。さらに個性的なキャストが揃って、奇天烈な演技の大騒動。何とも知れないようなお隣さんにご挨拶に伺って、妙な証拠物件が見つかっていって、住民同士の人間不信がどんどん盛り上がってしまうところ。この町でどんな事件が起きているのか。町の平和はどうなってしまうのか。トム・ハンクスはこのとき32歳。90年代からはシリアスな演技が中心なので、友達と一緒にショッキングな大絶叫で笑いを誘うような場面が今では珍しくて面白いですよ。この人はもともとコメディアンなので、愉快な演技が得意なんですよね。さらに本作ではホラーやサスペンスにも真剣に臨む表情を見せますよ。彼のファンなら必見ですね。
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