あき

シンドラーのリストのあきのネタバレレビュー・内容・結末

シンドラーのリスト(1993年製作の映画)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

人間を簡略化しすぎた勧善懲悪エンターテイメント

私の好き嫌いを全面に出したレビューなので、この映画が好きな人は読まない方がいい。

シンドラーの「もっと救えたはずだ!」というセリフで興醒めした。全く感情移入できず、作り物感、偽善が滲み出すぎて、ため息が出た。
シンドラーも元々はユダヤ人を差別していたのに、なぜこんなに特別に善人として描く?(主人公だから)
一方でナチスの将校は悪としての面しか描かれていない。でも、彼にも家庭があって家に帰れば優しい父親かもしれない。そういう観客の想像力を奪い、彼を悪者として処罰するのでは、観客にとってこの状況の根源的な悪は、性格の悪いナチスの男になってしまう。違う。悪いのはその制度を作った時代、社会だろう。

勧善懲悪の映画はこうやって一部の人間をわかりやすく悪者に仕立て上げるから嫌いだ。
人間には良いところ悪いところ、多面性がある。どうして家では優しい父親が気まぐれにユダヤ人を殺してしまうのか、何が彼をそうさせたのか、きちんと観客に想像させてほしかった。

映画という短い尺の中では、こいつは良い人、あいつは悪い奴、とレッテルを貼った方が観客にとってもわかりやすいし、作品としても作りやすいから仕方ないのだろうか。
これはヒーローもののエンターテイメントにすぎない。みんなでわかりやすく共通の敵を作って、そいつをやっつけて、ヒーローを応援してスッキリ気持ち良くなるだけの娯楽映画。それが好きな人には良い。でも、そのノリでこの繊細なテーマを扱って歴史を語らないでほしい。
水戸黄門やスカッとジャパンが好きな人にはおすすめ。
あき

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