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シンドラーのリストのwknt15のレビュー・感想・評価

シンドラーのリスト(1993年製作の映画)
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映画鑑賞の経験値が低い私でも、本作の脚本が見事であると確信できるくらい素晴らしかった。

実話であることに胸を打たれる気持ちもあるが、それ以上に映画として主人公の行動に感情移入して心が揺さぶられた。実在の人物をモデルにして現実とリンクさせつつも、映画の主題を明確に描くためにシンドラーに硬派なキャラクター性を持たせていたのが良かった。
実在の人物の物語を作るとき、無論必ずしもパーソナリティを忠実になぞるわけではない。それはある種、現実の曲解を生む危険を孕んでいる。しかし、それを以てしてもエンターテイメントとしての完成度の高さから名作としての位置を確立し、ホロコーストへの理解を深めるきっかけとなっている本作の主題のひとつは一貫しているといえるだろう。

もう一つ主題である清廉さについては、とてつもなく見事に描かれており、ただただ胸を打たれた。
シンドラーはユダヤ人を助けるという表現を徹底的に避けており、感情をあまり表にしない。ユダヤ人を単なる人材としてみなしているのか、本当に救おうとしているのか、終盤まで確信ができない(シンドラーの功績を知ったうえで鑑賞している観客も多くいるだろうが)。
しかし、ラストシーンで初めて感情的に無力さを嘆く姿を見て、財産を投げ打ってまで人間を救おうとする彼の強い信念を感じることができた。
彼の苦しみを思うと胸が痛くなったし、感情のタメが上手い脚本に膝を打った。
それと同時に、人間を人間としてではなく、対象としかみれなくなる戦時中においても、なんとか人間とその家族を救おうともがくシンドラーの姿に感嘆した。人間は清廉であれ、と訴えられているかのようだった。

この映画が公開された当時は新世紀に向けて人々が慌ただしく未来を見据えていた時期だろう。
そこで戦争の悲惨さと、人間として高潔であることの輝きを、改めて確認させられるものとして貴重な作品となったに違いない。
私にとっても、映画の良さというのを教えてくれた作品のひとつになったと思う。
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