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7つの贈り物のCinemanのレビュー・感想・評価

7つの贈り物(2008年製作の映画)
5.0
『7つの贈り物』
ガブリエレ・ムッチーノ監督
2008年公開

【Introduction】
noteやFilmarksで映画紹介の文章を読んだりコメントを書いているとそのやりとりで観たくなる映画がある。
今日の作品もそうだ。

ウィル・スミスの映画は何本か観ているけれど顔が思い出せない。
その程度の認識しかない。
ほとんどノーマークな役者だ。

ベッドにとりつけて以来大活躍しているタブレット・アーム・スタンドにタブレットを挟んで横になって昨日観たのが『7つの贈り物』だ。

冒頭の15分ほどは展開が早くて何がなんだか分からなかったがいつの間にか物語に引き込まれていた。
時系列も人間関係も入り組んでいたがジグソーパズルの一片がはまって絵柄の全貌が一瞬にして分かるような一瞬があった。
そんな作品でした。

【Story】
黒人の男が911に電話をかけて住所を告げ救急車を要請する。

電話の相手:「どうしました?」
男:「自殺者がいるんだ」
電話の相手:「それは誰ですか?」
男:「ぼくだ」
(ナレーション)
神は7日間で世界を創造した
僕は7秒間で人生を叩き壊した

そして物語が始まりました。

デスクにある書類とメモを見ている主人公のベン。
メモには“ベンへ、これが第後地域の候補者だ、私の名はだすな”
と書いてある。
書類にはエズラ・ターナーの名前に印がつけてあった。

ベンはある会社のコールセンターに電話をして嫌がらせに近いやりかたでクレームを言い立てている。
「お前の名前はエズラだな」
コールセンターで電話を受けたエズラは丁寧にクレームに対応するが、ベンは次々と無理難題をふっかけるばかりで話にならない。
「なんという肉をお前のところは出すんだ」
「肉をお前に送り返すから食べてみろ」
「お前はユダヤ人だから肉が食えないのか?」
エズラはベンのクレームに辛抱強く対応を続ける。
ーお客様のお名前はー
「ベン・トーマスだ」
(エズラは名前をリストで検索し)
ーお客様からの注文は受けておりませんがー
「お前は盲目か?」
「盲目で肉を食べない奴が肉のセールスをやっているのか?」
困り果てながらも笑顔で誠実対応するがベンの嫌がらせはとどまるところを知らない。
「お前が気の毒になってきたよ。オレの周りは美しい物ばかりなのに、お前は何も見えない。公平だと思うか?エズラ海が何色か知っているか?」
「言いたいことを言えよ、口答えしてみろよ」
ーお電話どうも・・・ー
「そんなことを言いたいのかこの臆病者!盲目のヴェジタリアンめ、臆病者の販売員め!」
ーさよならトーマスさんー
そっと電話を切るエズラ。

深夜の誰もいない「財務省 国税庁」のデスクでコンピュータでリストを調べるトーマス。
リストの中からエミリー・ポーサの預金記録を印刷して彼女に会いに行く。
エミリーは心臓に欠陥がありドナーが現れることを待っていた。

トーマスは航空エンジンの講義をしている。
妻のサラから電話がかかる。
ディナーの約束の時間だ。
サラを迎えに行き「いつも仕事のおかげで時間に遅れる」とむくれるサラをなだめる。

ビーチハウスのソファで寝ているトーマスに弟から電話がかかる。
「体調はどう?体をいたわっている?ひどい声しているよ」と弟の声。この場面の兄弟の会話に謎のやりとりがある。

ベンはある病院の院長に滞納している税金の話を相談しに来る。
院長と会った後さきほど院長の問いかけに全く答えなかった老婆の病室に行き院長がどんな男かを尋ねる。
院長がいい人間であればぼくは彼の力になれるのだが・・・
老婆は院長の処方した薬のおかげでめまいがすると筆談で答え、
彼は私に罰を与えていると泣き出す。

ベンは車椅子で老婆を浴室に連れていく。
その様子を見ていた院長が「なにか問題が?」
ベンはこの人の体を洗えと院長に言う。
老婆は小さな声でベンに有難うと言う。
ベンは院長に向かって「これから時々ここに来る。患者にもっと敬意を払え。人をこんな風に扱うな。納税期間延長は却下だ。あやうくお前にだまされるとこだった」言って彼の頭を壁に押しつける。

ゴルフ場で友人夫妻に会うベン。
なにやら意味の分からない会話を夫と交わす。

病院内のカフェ・テラスでノートを見ながら頭を剃り上げた小さな黒人の子を眺めているベン。
遠くの席でベンを見つけたエミリーがベンのところに来る。
「あの子を見ているの?私を見ているの?この前病院で会ったでしょ」
国税局のバッジを見せ「国税庁の調査で来たんだ。私はベン・トーマス。あなたが滞納している税金は5万6240ドル19セント。私が担当者だ。あなたの収入の状況を調べさせてもらった」と言う。

モーテルの受付にいるベン。
受付が対応に出てくる。
ートラベル・インにようこそー
「部屋はあるか?」
ー何時間だー
「2週間ほど」
チェック・インしたベンが部屋に入り机に広げたスクラップを見る。
新聞記事は“事故で7人が死亡。ハイウェイの悲劇”

アイスホッケーの練習風景。
練習風景を眺めるベン。

ここまで映画が始まってから25分経過しているんです。
何がなんだか分からない。
時系列も人間関係も。
主人公ベンは国税局調査員らしい。
滞納している人々に会って面接しているようだ。
なんでベンは航空学の講義をしていたのだろう。
病院の老婆にはあんなに親切にしたのにコールセンターのエズラには
とことん嫌がらせの電話でいじめる。
ベンはいい人なのか悪い人なのかもしかして二重人格?。
ベンが見ていた自動車事故で7人死んだという新聞記事は何?

ミステリアスな音楽をバックにいくつものエピソードが淡々と積み重なって物語は語られていくが全貌がまったく掴めない。


【Trivia & Topics】
*人に説明しにくい映画。
とても説明しにくい映画です。
物語を知ってからと何も知らずに観るのとでは観終わった時の感動の落差が大きいと思います。
できれば何の前知識もなく観てもらいたいですね。
ぼくは全貌を知った時の衝撃が大きくラスト・シーンでは涙が出そうになりました。

*賛否両論。
天使のような人間を描いた映画だと見るかこんな偽善的な作品があっていいのかと感じるか。
どちらにせよちょっと面白い映画だねといったレベルの作品ではない。

*ネタバレ含みで物語をかいつまんで言うと。
自分の不注意によって引き起こした交通事故で、愛する婚約者と見ず知らずの6人を死なせてしまったことを悔い、ある『7つの贈り物』によって他人の人生を変えようとする物語です。

*素敵な使われ方をした2曲について。
48分頃から始まるシーン。サポート・センターでベンにいじめられていたエズラ・ターナーが公園のピアノで弾く「モーツァルトの幻想曲ニ短調K397」が素敵だ。
甘さに流されずコントラストのはっきりした演奏が素敵なのでググったところ演奏者はロレッタ・メントという女性ピアニストでした。
"Fantasie in D Minor K.397" Written by Wolfgang Amadeus Mozart Performed by Loretta Mento, Pianist Courtesy of Eroica Classical Recordings


もう一曲。
スライ&ファミリーストーンの「ケ・セラ・セラ」は1時間22分あたりから聴こえてきます。
スライの中でぼくが一番好きな演奏です。
オリジナルはドリス・デイが歌った1956年ヒッチコックの映画『知りすぎていた男』の主題歌。


この2曲に限らずこの作品は音楽の使い方のセンスが素晴らしい。

*7人の意味。
途中で主人公の底抜けな善人ぶりを疑ったりもする。
こんな善人がいるはずがない、と。
終盤になるとこの人は天使なのだろうかと疑う。
物語がドラマティックなのにも関わらず淡々と善意を振りまくウィル・スミスの感情を抑えた表情が印象的です。
ベンがなぜ善意を振りまいているかの理由が分かってきたあたりから感動が押し寄せてきた。
事故で亡くした人の家族ではなく新たに不幸な人を7人さがして善意を施すというのが素敵だ。
事故にあった人の家族に対しての話だと善意の輪が広がないからだ。

☆デュークが大好き。
エミリーの飼い犬のデュークが可愛い。
ベンがモーテルの部屋にデュークを保護しようすると管理人から馬はだめだよと冗談を言われるほど大きい。
デュークがひと目会った時からベンと絆を結んだことにエミリーは感心、いや、嫉妬していた。

【5 star rating】
☆☆☆☆☆
(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:見事な作品
☆☆☆☆ :面白い作品
☆☆☆  :平凡な作品
☆☆   :残念な作品
☆    :退屈な作品
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