みおこし

候補者ビル・マッケイのみおこしのレビュー・感想・評価

候補者ビル・マッケイ(1972年製作の映画)
3.7
先日惜しまれながらも引退を表明したロバート・レッドフォード。そんな彼の全盛期の、選挙を題材にした政治ドラマ。

有力者の父親を持ち、自身も名うての弁護士として活躍するビル・マッケイ。ひょんなことから上院議員になるための選挙への出馬を打診され、軽い気持ちで出馬するが...。

意外と数えてみると作品数の少ない「選挙映画」。政治に疎い私でも、当選にかける人々の熱量と気苦労が伝わってくる骨太な脚本に唸りました。調べてみたら、この年のオスカー脚本賞を獲得していますね。
選挙演説の準備に始まり、プロモーションビデオの撮影・編集に追われ、実際に街に赴いて市民たちの声を聞きに出かけたり、対抗馬とのテレビでの公開討論など、とにかく選挙に出馬するって本当に大変!!
容姿端麗で何不自由なく過ごしてきたビルが、一気に矢面に立たされて他の政治家や市民からキツ〜い攻撃を受けてすり減っていく様子がリアルすぎました。良かれと思った軽はずみな発言や行動が全て裏目に出て、時にはトイレで「お前は政治家のクズ」と罵られたり。途中から「もうレッドフォード様をいじめないで〜」と思わず叫びたくなるけれど、実際の政治家の皆さんは日々この激闘の繰り返し。
そして、それを支える家族やマネージャー、使いっ走りの運動員まで、みんなの力が総結集して当選に向けて頑張る姿が圧巻。いやーーー、本作を観たら選挙への価値観がかなり変わりました。

アメリカ国民の、国をより良くしようという熱い思いは昔から変わらず。国を挙げての超一大選挙の様子が、あたかもドキュメンタリーのように紡がれていきますが、逆にこれくらい投票する人もきちんと候補者に向き合わなければいけないんだなと、当たり前のことを痛感しました...。

最初は周りに言われるがままだったビルがだんだん政治家としての野心やプライドに目覚め、終盤に近づくにつれて毅然とした態度の立派な候補者に成長していく過程も見応えたっぷりでした。
しかし、本当の戦いは選挙に当選してから。あの手この手で当選しても、結局「俺は何がしたかったんだっけ...?」と本末転倒な力つき方をしてしまう議員がいてもおかしくないんだなぁと。国を変えるための選挙が、皮肉にも当選するための選挙になってしまいかねない恐ろしさ。
大変秀逸なテーマの作品でした。
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