春とヒコーキ土岡哲朗

ハリー・ポッターと賢者の石の春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

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詰め込みすぎて最高な異世界出発映画。

お金と気合いが入ってるから、今見ても迫力がある。20年前の映画なので、当時の印象に比べたら作り物に見えるところもあるが、それがあることで、その他の大部分は今見ても見劣りしないことに驚いた。当時の宣伝規模を思い出しても破格の予算だったと思うが、お金以上に気合いを入れて迫力のあるヴィジュアル作りに努めていたんだろう。

主人公たちが子供だから面白い。このシリーズは主人公たちの年齢が上がるとともに対象年齢も上がっていった。この1作目については主人公たちの幼さから、こちらも童心に帰り、見せられたものを純粋に受け取る心構えになる。チェスのシーンは、なんでロンがナイトの駒の馬部分に乗る必要があるのか分からないんだけど、それも子供向けな雰囲気で受け入れることができる。

そりゃマルフォイ、グレるだろ。最初にハリーに「友達を選んだ方がいいぜ」なんて言ってくるから、高慢で悪いんだけど、とはいえハリーを仲間にしようと手を差し出した。それをハリーが拒否した。スター・ウォーズでカイロ・レンがレイに手を取ってもらえなかったのを思うと、差し出した手を拒否されるのは、映画で断絶を描くのに象徴的な画なんだろう。孤独を抱えた者が仲間を求めて差し出した手を拒否されたら、より孤独になり、それを埋めるために攻撃的になるしかない。そして、ダンブルドアの最後の点数発表はスリザリン生に対して劣等感を煽りすぎ。校長なのになぜスリザリンの生徒の気持ちを考えないのか。公開当時はグリフィンドールの逆転勝利に喜んでいたが、大人になって見るとおかしい。そして、このシーン、逆転されたマルフォイの悔しそうな顔をわざわざ映している。この時点で今後につながるマルフォイの劣等感の蓄積をしっかり描いておいた監督の判断力がすごい。