シズヲ

スパイキッズのシズヲのレビュー・感想・評価

スパイキッズ(2001年製作の映画)
3.6
『SPY×FAMILY』見ててふと思い出したのでウン十年ぶりに鑑賞。凄腕スパイの両親を持つ小さな姉弟の活躍を描き、その後シリーズ化して4作目まで作られた映画。監督がロバート・ロドリゲスということもあり、アントニオ・バンデラスやダニー・トレホなどの馴染み深いラテン系俳優が出演しているのが面白い。実際ハッタリの効かせ方や荒唐無稽なアイデアの数々からはロドリゲスの味が感じられる。トレホの役名が“マチェーテ”でニヤリとしてしまうし、最後の最後にジョージ・クルーニー出てきて笑った。

ファミリー向けの作品ということもあり、とにかくガジェットを次々に登場させて視覚的な楽しさを追求している印象。乗り物から小道具的な装備に至るまで、007の秘密兵器を彷彿とさせながらよりマンガ的に落とし込んだようなアイデアが釣瓶撃ちで投入されていく。小さな姉弟二人が瞬く間にスパイとして活躍することになるシチュエーションも相俟って、ファンタジックな虚構性に満ち溢れている。「一瞬でチンされてハンバーガーが出来上がる“料理の素”」みたいなちょっとしたアイテムも妙に童心をくすぐられる。

話の説得力や掘り下げよりもあからさまにテンポを重視した内容であり、両親がスパイであることを冒頭でさっさと明かしたうえで開始約20分で主人公達を冒険へと放り込む。幼い姉弟をスパイとして活躍させるうえでの現実的なツッコミは割り込ませず、生来の素養と秘密兵器の数々で瞬く間に突き進んでいく。アントニオ・バンデラスといった名優もあくまで添え物、主役は子供達である。城に突入してからはスケールが屋内に押し込められて勢いが落ちている気もするが、子供の観客が見てて楽しめるように頑張っているのは伝わってくる。

敵側の奇想天外なキャラクター達はグロテスクさに片足を突っ込んでる気もするし、流石にカートゥーン過ぎるきらいはあるものの、何とか愛嬌はあるので妙な味わいがある。アントニオ・バンデラスも「子供は不気味なテレビ番組ばかり見ている……」とぼやいていたので笑った。秘密兵器“スパイ・キッズ”のインパクトは凄いので、なんだかんだでコルテス一家VSスパイ・キッズは中断なしに見てみたかった。

ある意味『SPY×FAMILY』よりもスパイファミリーだけど、今思うとあの作品自体は寧ろ『Mr.&Mrs. スミス』のがモチーフとしては近いのでしみじみする。そんでアントニオ・バンデラスとダニー・トレホが並び立つ絵面、僅かな時間であってもやっぱ胸が熱くなる。
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