チッコーネ

白い肌に狂う鞭のチッコーネのレビュー・感想・評価

白い肌に狂う鞭(1963年製作の映画)
4.2
とにかく明るい照明の場面が全くないという野心的な撮影で、全編が青みがかった闇に覆われていた。
それゆえこちらの聴覚も冴えてくるのだが、吹きすさぶ風や雷鳴、そして不気味な足音やドアノブの軋みが、心地よい現実逃避へと誘ってくれる。
俳優の顔は主に下方からのライトで照らされており、古城を歩くキャラクターの顔が消えてはまた現れるという撮り方が印象的な場面も。
『イタリアンホラーの巨匠』という枕詞はもはや不要で、映像だけでも充分に鑑賞の価値ありの作品と唸った、すごい。

また個人的には、脚本の退廃的な味わいに、かなり共感。
ハードな濡れ場の挿入が叶わないのは一般映画の宿命だから致し方ないとは言え、現実や倫理に囚われ性の探究を回避する者に、本作のヒロインが抱くアンビバレンツを衷心から理解することはできないだろう。
『カジノ・ロワイヤル』や『サイレンサー』など、米国作品でも活躍したダリア・ラヴィの激しい乱れ具合は、見事のひと言。
また召使役の俳優がピーター・ローレにそっくりで、思わず本人かと思ってしまった。