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眠狂四郎無頼控 魔性の肌のkojikojiのレビュー・感想・評価

眠狂四郎無頼控 魔性の肌(1967年製作の映画)
4.7
狂四郎シリーズ12作があと1本になった。
振り返ると、この第9作がやはり一番好きだ。
京都大堰川の河原での三枝右近との死闘はこのシリーズのベストバウト。円月殺法も美しい。
中でもこの時の狂四郎のセリフに一番痺れる。私には「詩」のように聞こえる。
それで是非もう一度皆さんにこの詩を聞いてほしいと思い、再度のアップとした。
前にいいね!をいただいたフォロワーの方に深くお詫びします🙇
以下過去レビュー
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2022.08.07鑑賞#352 評価4.0
1967年製作 監督:池広一夫(第4作女妖剣、第12作悪女狩り)
●市川雷蔵(狂四郎)
●鰐淵晴子(ちさ)
●成田三樹夫(黒指党首領 三枝右近)
●金子信雄(奉行 朝日奈)

眠狂四郎 第9作
 
 狂四郎は奉行朝日奈から将軍より京都の公卿に送られる黄金のマリア像の護送を頼まれる。このマリア像を島原の乱の残党黒指党が狙っていると言うのだ。その任務の代償は朝比奈の娘「ちさ」の体だった。さらに狂四郎はある女から狂四郎の姉が京都の尼寺に生きていると聞き、護送を引き受ける。黒指党の首領三枝右近は狂四郎と同じ混血の子だった。
狂四郎は「ちさ」ともに無事に京へマリア像を送り届けるが、そこにさらなる陰謀が待ち受けていた。
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 私は眠狂四郎12本のシリーズの中で、このシーンが一番好きだ。セリフの素晴らしさ。狂四郎の美しさ。最高の場面。

 狂四郎が言う「眠狂四郎、この世に生を受けて、初めて自分から挑戦するぞ」

 京の河原、色とりどりの染物が風にたなびく中、黒指党との死闘が始まる。
「血を流すには美しすぎる」

 こんな言葉が自然と喋れる市川雷蔵の存在。
 黒指党は円陣で攻め、それが崩されると、三人一組となり狂四郎に襲い掛かるが、狂四郎は二刀流で次々に倒していく。石ころだらけの足場が相当悪い河原での死闘。この立ち回りは必見!そして狂四郎が言う。

狂四郎「見ろ!神を信じ神の加護をひたすら念じてきたものが、悉く(ことごとく)屍(しかばね)と化した。それでも神があると言い張るのか。」
右近「ある!あるとも!」
狂四郎「ない!
 喜ばれずしてこの世に生を受け、白々しい目と風に吹きまくられたお前は、ひたすら神にしがみついた。そこまではいい。だが、人間のもつ心の弱さと迷いに付け込み、神の名を振りかざす、神の美名に隠れて己の私利私欲を満たす。三枝右近は、生かしてはおけぬ。」雷蔵の声がいい。
右近「黙れ。妖剣に狂ったお前はどうだ。どちらが正しいかの答えはどちらが死ぬかによって定まるのだ。」
狂四郎「お前の息の根を断つ。それが同じ星の下に生まれた者へのせめてもの情けと知れ!
 円月殺法!ジアボへのみやげによく見ておけ!」

 風にゆれる色とりどりの染め物。
そして下段の構えの剣が、音もなく回り始める。
美しい!
 狂四郎の剣が真っ直ぐに天に向かった時、右近が飛びかかる。
狂四郎は一閃額に剣を振りかざす。
右近の額から鮮血が滴る。

 死闘の後。
 黄昏の河原。
 幾重にも重ねた木が激しく燃えている。その上に乗せた「ちさ」を焼いている。
狂四郎「暗い運命を背負った宿命の子が辿るのは、所詮、この一本道。むしろ、ちさ殿にふさわしい野辺の送りかもしれぬ。」
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暗い運命を背負った「ちさ」役にぴったりの鰐淵晴子。男装もいい。
鰐淵晴子の美しさが引き立ったこの映画。当時美しさでは間違いなくNo.1の女優と私は思うのだが。

追記
狂四郎最後の旅立ちの時にかかるテーマ曲はカルメン・マキ「時には母のない子のように」の前奏とそっくり。ほとんどパクりではないかと思ってしまう。どちらが先かはわからないが。
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