いま観たら、どんな風に感じるかと思ったら、全く色褪せていなかった。やはり一つの完成形だと実感した。
改めてジョディ・フォスターとアンソニー・ホプキンスの初登場シーンで「これは間違いない!」と期待できる。しかも毎回初見のようにフレッシュな感動を覚える。
でも若い頃とは違い、良いと感じる箇所に少し変化があった。
以前はレクターのバックボーンや、バッファロー・ビル事件の衝撃に目が奪われがちだったけれど、より一層レクターとクラリスの対話、クラリスの強さに引き込まれた。
勿論この対話が本作の鍵であり、見せ場だという事は前から知っているし、シーンの演出も相変わらず冴えているが、新たな発見だったのは、対話の中身そのもの。
序盤の幼少期に牧場から逃げ出したという話に対し、終盤の子羊の話のオチが、若い頃の私には、恥ずかしながら拍子抜けに感じられたのだ。そんなに大したことないじゃん、引っ張った割に地味なエピソードだな、と頭の片隅で思ってた。本当は分かっていなかったのだ。
今回はその深さを理解することが出来て腹落ちした。そして誰にも話したことがない、自分の中でも言語化していない、過去の個人的な出来事。それを自ら見つめ直すに至った心の動線と、二人が共有したことの意味。震えるほど魅了された。
この軸があるから、このサスペンスをこんなに立体的に感じることができるのだと思った。