ぱてじ

羊たちの沈黙のぱてじのレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
3.5
タイトル、そしてジャケ写の意味。
伏線回収があり なるほどなあと思わず深いため息が出た。

解説を読むと、映画の最大のテーマは『痛みを愛して乗り越えられるか』なのだそう。なるほど、最初のシーンからもう一度見たくなる。

この手の作品は自分自身あまり得意ではないが、独特のカメラワークと予想外の展開にぐんぐん引き込まれる2時間だった。

レクター博士がサイコパスであるにも関わらず、思いやりや誠意を持って向き合う者には思慮深くしっかりと対応するのが印象的。そこが一種の緊張と緩和になっているのが良かった。

そして特徴的なカメラワーク。会話している人物を客観的に撮ることはほとんどなく まるで自分(視聴者)と会話しているように錯覚してしまう取り方をしている。役者の表情やセリフを一つ一つしっかりと噛み締めながら見ることができ、難しい内容でもしっかりと伏線を感じながら見ることができ面白い。

内容的に怖かったりぐろいシーンが多いのかと思ったらさほど無かったのも個人的によかった。(私がグロテスクな演出が苦手なため)
びっくりさせるような演出もたくさんあるのかと思いきや、吊り橋を渡るようなドキドキするシーンの後に、あれ?何も起こらない…と安心させる。その後しっかり予想外の展開で驚くのがチープでなくてとても良かった。

また、音楽の使い方が斬新だった。
驚くような展開が起こるシーンにあえて落ち着いたクラシックを使うアンバランスさや、奇妙で君が悪いシーンにあえてポップな音楽を使うことで 視聴者側が君の悪い事件の目撃者になっているように錯覚させる。カメラークも相待って映画の中に引き込まれるように随所工夫がされていた。

余計なセリフは一切ないのに物語が理解できるように構成されていてよかった。

最後に、ヒロインが魅力的。表情や容姿が魅力的なだけでなく 落ち着いていて、クレバー。男性社会にいるのにも関わらずしっかりと女性らしいしなやかさがあって素敵だった。

終わり方も最高に気味が悪くて含みがあっていい、こういった終わり方は心臓が内側からゾクゾクする感じで好きだ。

不愉快でいて魅力的な変態やサイコパスがたくさん出てくる映画は良い。ただ心が健康な時に見たい映画だ。
ぱてじ

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