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羊たちの沈黙のEDDIEのレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
4.5
過去のトラウマとの対峙。猟奇的殺人を通してFBIの見習い女性捜査官が逞しく生き抜く。ハンニバル・レクターのカリスマ的存在感がサスペンススリラー映画としての質を一層高めている映画史に残る傑作。

名作、傑作と名高い本作。しかしながら、初鑑賞となりました。『ハンニバル』『レッドドラゴン』と三部作として製作され、『ハンニバルライジング』というレクター博士のオリジンを描いた作品もあり、続きものであるために後回しになっていました。
第64回アカデミー賞でも主要5部門受賞(作品賞、監督賞、アンソニー・ホプキンスの主演男優賞、ジョディ・フォスターの主演女優賞、脚色賞)の名作として疑いない作品なので、実際めちゃくちゃ面白くて「なぜ今まで観なかったんだ」と後悔しました。

中でも驚きはアンソニー・ホプキンス。本シリーズを観たことなくとも、映画史上でもインパクトの強い悪役として名高いレクター博士なので、もちろんとんでもない存在感を放っていたんですが、なんと出演時間は20分程度?ではないかと思います。
限られた出番ながら、圧倒的なパフォーマンスを発揮。収容所から脱獄する一連のシーンは衝撃的でした。
グロいシーンは腐乱した死体なども含め満載な本作ですが、サスペンス好きでその辺りのグロ耐性がある方には是非とも観ていただきたい作品です。

またもう1人の主人公クラリス・スターリングを演じたジョディ・フォスターと彼女の日常の心理的嫌悪を表現した演出は秀逸でした。
クラリスはバージニア大学卒業生でFBIアカデミーで実習生として訓練に励む新人。屈強な男性陣が多い職場にあって、彼女の存在は異色でした。エレベーターに乗り込むシーンなんかは彼女の境遇をわかりやすく表している巧い演出。捜査に向かう先でも口説きやセクハラ発言が横行しており、彼女の日常的に受けている心理的ストレスはなかなかのものだったと想像できます。
このあたりを映像でわかりやすく表現、演出しているあたりが本作の素晴らしいところですね。

牢屋の柵越しにレクター博士とクラリスが質問をし合う心理戦も見応えがあります。これはレクターを演じるホプキンスの狂気じみた怪演もあって、観るものを魅了していきます。

事件の真相を追う上でレクター博士が懸命で真っ直ぐなクラリスに協力するわけですが、事件の犯人がかなり凶悪でありながらも、レクター博士は完全にその上をいく狡猾さを感じさせました。

それにしても続編の『ハンニバル』は調べたところAmazonプライムレンタルで吹替版しかない様子…『レッドドラゴン』はNetflixで鑑賞できそうですが、『ハンニバル』どうしようかな。またお預けか、吹替で観るか。ただレクター博士の今後はかなり気になるのでいずれちゃんと観ようと思います。

※2020年自宅鑑賞147本目
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