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羊たちの沈黙のYYamadaのレビュー・感想・評価

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
4.0
【その男、ハンニバル・レクター】①
第64回 (1991) アカデミー5部門受賞
 (作品/監督/主演男優/主演女優/脚色)

①息詰まる心理戦
・アメリカの人気作家トマス・ハリスの原作をジョナサン・デミ監督が映画化した、シリーズ第1作目。
・FBI実習生クラリスは連続猟奇殺人事件の捜査助言を求めるため、投獄されている元精神科医のハンニバル・レクター博士に面会。自身の過去を話すことを条件に助言を約束させるが…
・タイトル『羊たちの沈黙』(The Silence of the Lambs)は、クラリスのトラウマ克服を差す。幼年期に里子として過ごした農場にて、解体される仔羊たちの悲鳴がトラウマ化したクラリスが、連続殺人とその仔羊を重ね、事件解決により、悲鳴を沈黙にかえることが出来るか?
・本作は「ハンニバル・レクター博士」との心理攻防と、若い女性を狙う「バッファロービル」の連続猟奇事件を並行して描き、作中の緊迫感は並々ではない。

②アカデミー主演W受賞 圧巻の演技
・『アメリカ映画の悪役ベスト50』ランキングの1位に輝いたことのある、犯罪精神科医ハンニバル・レクター博士。本作の出演時間はわずか16分のレクター博士だが、圧倒的な存在感を発揮。
・演じるアンソニー・ホプキンスは、役作りのために、実際の猟奇殺人事件の研究し、ハンニバルを人物設計。
・クラリスとの初対面シーンでは、まばたきなく直立不動で対峙。ホプキンスのアドリブによる南部訛りを馬鹿にする演技が、実際にジョディ・フォスターを感情的にさせ、名場面のクラリスの恐怖の表情を生んだ。
・一方のクラリス演じるジョディ・フォスターも本作にて2度目のアカデミー賞を受賞。
・当初、ミシェル・ファイファー起用を希望したジョナサン・デミ監督は、配給会社からの要請を受け、渋々ジョディ・フォスターを配役。撮影時には、標準語で話すジョディを咎めた際に、ジョディはクラリスの訛りはレクターが判るくらいのわずかなものにした方がよいと主張したそうだ。
・「羊たちの沈黙」を語るシーンにおいても、ジョディ・フォスターの表情が物語っており再現映像はなしになったそうだ。

③私的解釈…なぜ作品賞に選ばれた?
・同年のアカデミー作品賞には『バグジー』 『JFK』 などがノミネートされたが、主演2名の圧倒的な演技に加え、単なるサイコパス映画ではない「克服」をテーマに扱った脚色も含め、ぶっちぎりの選考結果であったと思う。
・本作はアカデミー作品賞にて、唯一のホラー作品(『ノーカントリー』も?)であり、主要5部門を受賞した数少ない作品(三例目)のクオリティに間違いはない。

◆アカデミー作品賞 受賞作の中の
 本作のポジショニングは …
★★★☆☆ 芸術性
★★★☆☆ 社会風刺・メッセージ
★★★★☆ ストーリーライン
★★★☆☆ 革新性
★★★★★ 演技・演出

★★★★☆ 総合評価 (独断と偏見)
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