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ブロンクス物語/愛につつまれた街のTLsのレビュー・感想・評価

4.9
実際に住んだことはないがブロンクスと街角とノスタルジアを感じさせる名作。筆者はマフィア映画として見たが、そうでなくとも非常に面白く映画としてほとんど完璧な作品だった。

この映画は一人の少年の成長を通して父親、そして街の顔役との奇妙な関係を描いている。序盤は主人公の幼少期を描き父親と憧れの顔役との比較を中心に人生の大きなターニングポイントを描いている。ここでグッとくるのは決してマフィア目線ではなく、この少年目線で描かれていることである。だから、マフィア映画でありがちな騙しあいのようなものはなく、街の顔役が少年の憧れとして描かれている。一方父親は公営バスの運転手で稼ぎは少ない。しかし、そんな父親とのひとときが私の子どものころを思い起こさせるもので非常に良かった。また、街角の活気や顔役とその仲間たちの雰囲気が非常によく、その街の空気をダイレクトに感じることができた。

後半では成長した少年が父親、顔役の意図を知る。中盤で父親と顔役の間で決定的な事件が起こるのだが、この後半で起きる様々な出来事(悪友との交流、初恋など)を通してこの2人の本当の目的を少年は知る。この流れに私は非常に感動した。さらに、少年がつい父親に強く当たる場面などは自分を重ねてしまい泣いてしまった。この映画はこのように普遍的なノスタルジーを描いているので見る者それぞれに刺さるシーンがあると思う。そして、顔役と少年の別れが訪れるのだが、非常に悲しく、少し清々しいものだった。葬式に父親が出席したのが彼と顔役との複雑な関係を物語るもので良かった。

笑あり涙ありの正に王道を征く映画であった本作。少々伏線が分かりやすいところもあったが映画としては完璧だったと思う。これを戯曲と制作したチャズ・パルミンテリと監督のロバート・デ・ニーロにはこの場で敬意を表したい。
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