大道幸之丞

ブロンクス物語/愛につつまれた街の大道幸之丞のレビュー・感想・評価

4.5
主人公“C”ことカルジェロにあたるチャズ・パルミンテリ原作の本作はほぼ実話に基づいている。

街の顔役で実力者の「ソニー」がとある事件でカルジェロが目撃者であり、状況をしっかり観ていたにも関わらずソニーに庇うためにウソの供述をしたところから、ソニーが気に入りカルジェロに“C”と名付け何かと可愛がり面倒を見出す。しかしそれは実の親ロレンツォにとっては時にありがた迷惑であり、家庭全体に戸惑いを生む事になる。

感じるのはカルジェロは人生でのポイントで両者に助言を求める際には父ロレンツォが情緒的で思いに優る傾向にあるのに対しソニーは完全に「実学」で教えてくれ、どちらかと言えばソニーに影響を受けていくところだろう。

ここでカルジェロが経験するのは誰もが経験するであろう悪い友人からの誘惑や恋愛なのだが、本人にとってはは全て一大事。真剣に悩み真剣に「2人の親」に問うて乗り越えていく。しかし一方で人間は過去の過失の代償はかならず払わねばならず、それはラストのソニーとの別れの場面が象徴する。

この映画では街が1Fがバーや飲食店で上階が住居の為に一つのコミュニティが形成されており、子供の世界も大人の世界も分離されておらず皆が眼前の問題に関与せざるを得ない、やはりそれが正常な人間の「暮らしの姿」なのだと思う。

この映画でもイタリア系アメリカ人街ベルモントとアフリカ系アメリカ人街との抗争の構図があるが、学校内にまで持ち込まれるコミュニティ意識は蹉跌を生むしそこから人間は明日を考えるようになる。その意味でも誰もが普遍的に楽しめ心に残る作品だと思った。