月うさぎ

メリー・ポピンズの月うさぎのレビュー・感想・評価

メリー・ポピンズ(1964年製作の映画)
4.5
スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス♪ (Supercalifragilisticexpiaridocious)
この映画は魔法の映画だ。
音楽も映像も50年以上前に作られた映画と思えないほど仕上がりは丁寧で美しい。
ずっと以前から、メリー・ポピンズのキャラクターも音楽も知っていた。
東風に乗って、空からパラソルで降りてくるという、細切れの映像や写真での知識
映画としては知らないままでいた。

「メリー・ポピンズ」の映画化の際は原作者との交渉にトラブルもあったらしい。
それでもウォルト・ディズニーがどうしても映画化したかった物語だったのだ。

ジュリー・アンドリュースの初主演映画でもある。

予想以上に素晴らしい映画だった。

もちろん古い映画だし、大人向きのストーリーとは言えない。そこをよしとすれば、見所はかなりいろいろある。
バート役のディック・ヴァン・ダイクの芸達者なこと。アニメと実写のコラボの自然で丁寧な仕上がり、煙突掃除夫たちの見事なダンス。

子供と父親の関わりをテーマにしているわけだが、単なる家族の物語として描いているのではない。

時代は1910年を想定していて、映画作成時よりもさらに50年昔の物語なのだ。
エドワード王時代は男の時代。
男女の人権格差が浮き彫りにされている。

まず、冒頭で母親が「女性参政権を求める活動家」として登場。
でも家庭の中では夫が最高権力者で、妻も子も父親には逆らえない。
銀行家の父は自分の仕事に誇りを持ち、融通が効かない頑固者。
子供を連れて出かけたこともなければ、おふざけなどもってのほか。
そんな父親がどう変わるのか?何をきっかけに目覚めるのか?

経済問題、貧富の差、階級の差。
さりげなくだが社会的要素がしっかり映画の中にある。
わずか2ペンス…その重みを子供に伝えたい。
そんな気持ちも受け取れる。


メリーの声と歌はオリジナルと吹き替えでイメージはほぼ変わらない。
バートの声は山寺さんだったと思いますが、彼の方が明るくていい。ご本人に申し訳ないが、ディック・ヴァン・ダイクは顔の表現や体の動きがめちゃくちゃ動的なのに声が地味で平板。なんというかテンションが違っていて、見た目と声とが合ってないというか。
私は本来字幕派なのだが、吹き替えで問題無し。と思える数少ない映画になった。

この映画、もっとメジャーでもいいのでは?

まあ、ちょっとヘンな映画だとは思いますけどね。

…と、思っていたところ、この映画もリメイクされた。
50年も間があいた続編で、20年後の同じ家族の元にメリーが再び現れる?
どうでしょう?いっそまるで別の家族の物語にした方がいいような気がしますが。
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