うえびん

ニュー・シネマ・パラダイス/3時間完全オリジナル版のうえびんのレビュー・感想・評価

5.0
映画による
映画好きのための
映画をテーマにした物語

1989年 イタリア作品

年明けにJ-waveのモーニング・クラシックのコーナーでエンリオ・モリコーネ特集をやっていて、本作のテーマ曲を聴いていたら、無性に観たくなって、レンタル店に行ったら『3時間完全オリジナル版』というのがあって、迷わずチョイス。

冒頭のテーマ曲、海辺の映像、徐々に引くいてゆくカメラワーク…早々にシチリアの世界に惹き込まれてからのあっという間の3時間だった。

映像が美しい、街並みや自然の景色が美しい、俳優が、演技が美しい、言葉が美しい、そして、音楽が美しい。ブラボー!

前に見たのは学生の頃だったろうか。古い下宿の狭い部屋の小さなブラウン管テレビ。VHSのビデオだったろうか。邦画やアメリカ映画、香港映画しか観たことがなかった当時の僕にヨーロッパ映画の魅力を強烈に感じさせてくれたのをうっすら覚えている。なのに具体的な場面は、二人乗りの自転車と最後のシーンくらいしか記憶に刻まれていなかった。青年期のトトと同じくらいの歳だった当時の僕には、アルフレードの思いには未だ共感しきれなかったんだろう。

それから約30年、故郷を離れたトトがローマからシチリアに帰郷するのと同じくらいの歳月を経て再鑑賞した同作は、全てが心に刺さりまくった。少年期の憧憬、青年期の恋心、壮年期の郷愁…トトの成長と相まった人々との出会いと別れ。アルフレードとの友情、親子の愛、エレナの恋慕…。現在・過去・未来、映画(パラダイス座)を軸に巡る時間、全てが最高だった。

よい映画は、時を経て観返すと違った味わい深さがある。若い頃に観た作品たちを観返してみよう。また、本作はおじいさんになった頃にまた観てみよう。その時は、晩年のアルフレードの思いに近づけるかもしれない。
うえびん

うえびん