アランスミシー

ニュー・シネマ・パラダイス/3時間完全オリジナル版のアランスミシーのレビュー・感想・評価

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ニューシネマパラダイス
=保守とリベラルの相互理解
=時代の変化を受け入れつつ、人民とそして自分自身の為の健康で幸福なパラダイスを維持し続けよう

「秩序は戻り時は川のごとく流れる」
劇中劇で流れる挑戦志向の象徴的な一句

《トト母》安全志向→挑戦志向
夫の戦死後、貧困にも関わらず息子が映画という安定しない業種に興味を持つ事に反対する母だが、息子の映画への情熱と愛を見て旅立ちを受け入れる。

《トト》冒険志向→安全志向
[少年期]
[青年期]無謀vs慎重&堅実
時代の波である資本主義に呑まれ稼ぎを倍増させる為に無謀な作戦で2館同時上映。
これは当時の行き過ぎた資本主義への警鐘
「エンドタイトルは省略だ」と言ってフィルムを巻くトトは映画の本来の役割を見失ってしまっている→消費ではなく人生の傍らとしての映画。
[中年期]

《アルフレード》賢者
「現実は映画のように甘くない」
教育の機会を得られずに貧困者として暮らす事がどれだけ孤独で大変なことか身をもって知るアルフレードはトトが自分と同じ未来を歩まないようあらゆる場面で助言する

画面のボケを当てたアルフレッド
=科学(左脳)に走り過ぎてる現代人に対して感覚(右脳)の大切さを享受。


《イタリア保守派》安全志向→挑戦志向
東西冷戦期、カトリック教会やかつてのイタリアファシスト党による権利独占への不満からイタリアにも共産主義の波が湧き立って居た。
教会の施しを受けられず取り残された民衆へ向けてアルフレードが屋外へ向けて映画をシェア(共産主義的行動)するも飽き足らずそれにまで漬け込もうとした神父(教会)の行動に天罰(火災)が起こる。

しかしやがて教会も時代の波を受け入れ新しい時代(ニューパラダイス)を受け入れる

宝くじ当選者は富の独占ではなく公共施設再建設に投資した。
この「投資」というワードがこの映画の前後半を二分するキーワードとなる。それは財産を抱え込む保守(貴族主義)とは逆ではあるが、別の意味で金に囚われ本来の目的を失う主義。

物理的に存在する金品を独占する主義から
株という架空のモノを追う主義へ→


《宝くじ当選者》挑戦志向→安全志向
神父とトトの母の前でトトへの映写技師引き継ぎ手続きをした際の宝くじ当選者の
「悲しい顔はよせ人生の門出だ。元気を出せ音楽だ!」というアルフレードの病状などお構い無しな台詞はこの後来る行き過ぎた資本主義の到来を予言している。
直後に来る新時代的なトロピカルな音楽の映像と相まって、それはまるで戦死者を労る事すら忘れ大量生産&消費に明け暮れた欧米資本主義への皮肉のように感じられた。

教会のキスシーン規制は保守(安全志向)に偏りすぎではあったものの、今度は唐突に裸体が画面に映される行き過ぎたリベラル(挑戦志向)に転換してしまう。
これにはキスがあんなに愛らしく思え始めてた鑑賞者には少し違和感に感じたはず。

【ラスト】
最後の劇場建て壊しは、保守イタリアでも資本主義イタリアでもなく、どちらの良さも理解したシネマパラダイスへと進化する。