ヒフミンチ

ギャング・オブ・ニューヨークのヒフミンチのレビュー・感想・評価

4.3
アメリカの歴史や文化を理解していないと楽しむことが難しいかもしれない。この作品のレビュースコアが思ったほど高くないのは残念に思う。

教科書的知識やこの作品ではない別の作品、メディアで見聞きしたことで穴の多いモザイク状態だった知識を具体的なイメージでかなりの部分補完してくれた良作。

移民国家特有の民族対立、宗教、治安、文化、格差、黒人差別、政治などがかなり緻密に描写されている点やそれを描き出す構成に驚いた記憶がある。

特に当時の消防組織の火災に対する対応の仕方、というより組織としての在り方だったり、南北戦争へと突き進むニューヨークの世情の描写なんかが特に記憶に残っている。
ワンカットの長回しで描くそのシーンではアメリカに渡った移民の行く末を端的に表現していた。兵募所にいる若者が書類にサインし、別の若者が銃を受け取り、そうした若者たちが兵隊として列を成して船に乗船。乗船する兵と行き違いに棺桶が船から荷降ろされ、港に並べられる様をよどみなく流れるように表現していた。
というよう緻密な描写や構成が歴史に関する知識欲を刺激してくれる。

もちろんメインのストーリーも自分としてはとても楽しめた。主人公は悪役との因縁を晴らそうとあがくのだが、アメリカの当時のカオスめいた世情が登場人物たちを翻弄し彼らを飲み込んでいく。

単純な復讐劇としても観れるが当時の時代背景を知っているとバックボーンが透けて見えて、より味わい深い作品として楽しめると思う。
ヒフミンチ

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