半兵衛

アンタッチャブルの半兵衛のレビュー・感想・評価

アンタッチャブル(1987年製作の映画)
4.5
実話という割には勧善懲悪の度合いが強すぎないかとか所詮スターありきの企画じゃないかとけなしたくもなるが、それでもその完成度の高さはゆるぎないし久々に鑑賞しても面白かった。

冒頭のメインテーマとタイトルバックが格好良すぎて痺れるし、マフィアと戦うアンタッチャブルのメンバー四人の個性も魅力的でそれを演じる役者たちのキャラクターとマッチしているし、そんな彼らと対峙するアル・カポネを演じる役者としてノリにのっていたデ・パルマ初期の常連でもあるデ・ニーロの憎々しげな演技も素晴らしいし、何よりそんなスターメインの作品なのにデ・パルマらしいケレンのあるカメラワークが存分に活用されていてそれを見ているだけで楽しくなる。

元ネタがルイス監督の『秘密捜査官』と言われるだけあり、1930年という舞台もあってクラシックなノワール映画の雰囲気があるのも個人的には嬉しい。そして冒頭で亡くなった少女の怨念に突き動かされるケヴィン・コスナーはデ・パルマらしいキャラクターでありながら実は『復讐は俺に任せろ』のグレン・フォードの要素も。

監督の決めに決めたカメラ演出は階段での銃撃戦と乳母車の場面でピークに達する。そこでピンチを救うアンディ・ガルシアは控え目に言って最高にカッコいいし、あの姿勢もいいし標的がカウントする数字を撃った自分が言うのも凄いスタイリッシュ。でもこの場面が良すぎて、肝心のターゲットが逮捕されたこともあり終盤はどことなくテンションが落ち気味になっているのが気になったりも(それでも傑作なのだけれど)。

それにしてもアル・カポネのお気に入りでフィルムも所持していたという『暗黒街の顔役』のリメイク的な映画『スカーフェイス』を監督したデ・パルマが、四年後にアル・カポネを悪役にした本作を手掛けるというのは映画の奇妙な縁を感じずにはいられない。しかも本作ではマフィアのボスだったデ・ニーロが翌年の『ミッドナイト・ラン』ではマフィアを知恵で追い詰める役柄を演じているというのも興味深い。
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