エニグマ

ニンゲン合格のエニグマのレビュー・感想・評価

ニンゲン合格(1999年製作の映画)
4.3
交通事故で10年もの間昏睡状態となり、24歳で目覚めた吉井豊(西島秀俊)。友達はもう大人になり、両親は離婚して父親は宗教、母親は再婚、妹は男の家に居座っていた。父親の友人、藤森(役所広司)の力を借りながら、家族の再生に奮闘するヒューマンドラマ。
「心温まる、現代の寓話」と言いつつちゃんと怖い。これはホラー的な怖さではなく、人々の道徳心のブレ、そして時間の経過による人々の変化から来るものである。そして人の顔を暗くするようなライティングがまた雰囲気を作っていた。
中でも西島秀俊は、昏睡状態だったため精神的には14歳の中学生である。そのため役所広司がどこかへ連れていこうとすると意地でも抵抗して毎回引きずられていくわけである。それがシーン間の橋渡し的に挿入されるので面白かった。他にも馬の持ち主と喧嘩したりなど全体的にガキっぽさが目立つが、そのある意味の純粋さが冷たい関係となりバラバラになった家族を再度引き寄せたのかもしれない。ただ、同窓会で集まった友達の言動を見るに、人間そこまで成長しないのも事実である。
産業廃棄物が捨てられ、牧場が作られ、そしてまたゴミの山が置かれるという庭の状態は、そのままあの一家の状況を表すメタファーにも思えた。
そして最後の呆気なさ。皮肉にもあそこで初めて家族全員が集合するのが悲しい。「俺、ちゃんと存在してた?」と言っていたが、最後の集合カット(あの人々が集まったことこそ)が彼の存在証明となっているようで良かった。
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