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ザ・ファンのtakのレビュー・感想・評価

ザ・ファン(1996年製作の映画)
3.5
ロバート・デ・ニーロの演技は過剰なまでにエネルギッシュだ。演技そのものも、独自の役作りにも感じられる。どこかブッとんだ役柄が多いのだが、「キング・オブ・コメディ」のコメディアン志望の男も、「ケープ・フィアー」のサイコキラーも、その人が生きてきた背景を観客にしっかりと認識させ、ただの奇行、ただの犯罪者で終わらせない説得力がある。

このトニー・スコット監督作「ザ・ファン」でデ・ニーロが演ずるのは、大リーグの熱狂的なファン。私生活では別れた妻との間に息子が一人。父親が腕のいいナイフ職人だったが、その店も経営は他人に委ねられ、自分は評判の悪いセールスマン。彼は悪魔でも何でもない。ただの一市民。日頃の憂さを野球観戦で晴らそうとしているだけだった。それが違った方向にエスカレートして、物語は悲劇的な結末へと走り出す。

「お前は何が望みなんだ」と問われるラスト。彼は何も答えられない。サスペンス映画のラストなのに、僕らは悲しい人間ドラマをそこに見る。ただチームを愛している自分を他人に認めて欲しかった、それだけなのに。筋だけ追えばストーカーの話。でもただのストーカーに終わらせない。

ウーピー・ゴールドバーグのが熱心なバスケファンを演ずる「エディー 勝利の天使」を、もしデ・ニーロが演じたらきっと「ザ・ファン」になってしまうに違いないww
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