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消えた拳銃のFilmomoのレビュー・感想・評価

消えた拳銃(1966年製作の映画)
4.4
①本作は大ヒットドラマ『逃亡者』の放送中に製作された。デヴィッド・ジャンセンはここでも殺人の嫌疑をかけられ、疑いを晴らそうとする男(刑事)を演じている。面白いのは、「人を撃ったこと」は事実だが、その理由が「銃を持って撃とうとした」からでジャンセンは正当防衛を主張する。ところがその現場では犯人の拳銃が見つからなかったことで故殺罪に問われてしまう。さらに死んだ男は慈善家の医者で現場のアパートを訪れていたのは老婦人リリアン・ギッシュの治療の為だったことが分かると、世間はいっせいにジャンセンを攻撃する。裁判でも検察官はジャンセンを追いつめる。『逃亡者』のようなサスペンスというよりミステリー・ドラマ。②謎の中心は「犯人の銃はどこに消えたのか」であり、なぜ消えたのか?誰が持ち去ったのか?持ち去ることができたのか?という謎が終盤まで横たわり、興味が尽きない。物語の進行と共に主人公ジャンセンはどんどん追いつめられていく。TV系のスタッフが集合して製作されているので、映画的なダイナミックさよりも室内での心理劇や、主人公の描写に重きを置かれているように思える。③ジャンセンは劇中、酒を飲まない。代わりにバターミルクを飲む。この小道具も後で効いてくる。前半の死因審問は映画なら省略するところをじっくり見せるので説得力が増す。中盤離婚調停中の妻が登場するが、この妻の行動がどこか異常で、ジャンセン側から離婚を申し出ているようにみえる。私の好きなエリノア・パーカーがお色気満点の熟女(死んだ医者の妻)として登場し、ジャンセンを翻弄する。終盤意外な犯人がわかり、拳銃の行方が判明する時、医者が治療のために訪れていたリリアン・ギッシュの存在が大きく浮かび上がる。これは巧いシナリオだと思う。全体的に『逃亡者』のスピンオフのような雰囲気だが観て損はないミステリーだ。
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